1999年に発売されたアマルティア・セン著『不平等の再検討―潜在能力と自由』が、岩波現代文庫として出版されることになりました。これまで2万4千部あまりを売り上げ、センの潜在能力(ケイパビリティ)アプローチの入門書として広く読まれてきました。今回、現代文庫版として出版するにあたり、潜在能力(ケイパビリティ)アプローチの応用例として、1990年代の日本で行われた不平等に関する議論を潜在能力(ケイパビリティ)アプローチの観点から論じ、また陥りやすい誤りを指摘した文章を「現代文庫版訳者あとがき」にかえて載せています。こちらの方もお読みいただければ幸いです。
なお「潜在能力」という語は元の訳を尊重してそのまま使っていますが、誤解を招きやすいため私自身は最近では「ケイパビリティ」という語を用いています。
(池本幸生)
訳者まえがき | |
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はじめに | |
序章 問題とテーマ | |
第一章 何の平等か | |
1 | なぜ平等か、何の平等か |
2 | 公平さと平等 |
3 | 人間の多様性と基礎的平等 |
4 | 平等 対 自由? |
5 | 複数性と平等の「空虚さ」 |
6 | 手段と自由 |
7 | 所得分配、福祉、自由 |
第二章 自由、成果、資源 | |
1 | 自由と選択 |
2 | 実質所得、機会、選択 |
3 | 資源とは区別された自由 |
第三章 機能と潜在能力 | |
1 | 潜在能力の集合 |
2 | 価値対象と評価空間 |
3 | 選択とウェイト付け |
4 | 不完全性―原理的なものと実際的なもの |
5 | 潜在能力か機能か? |
6 | 効用 対 潜在能力 |
第四章 自由、エージェンシーおよび福祉 | |
1 | 福祉とエージェンシー |
2 | エージェンシー、手段および実現 |
3 | 自由は福祉と対立するか |
4 | 自由と不利な選択 |
5 | コントロールと有効な自由 |
6 | 飢え、マラリアその他の病気からの自由 |
7 | 福祉の妥当性 |
第五章 正義と潜在能力 | |
1 | 正義の情報的基礎 |
2 | ロールズの正義と政治的構想 |
3 | 基本財と潜在能力 |
4 | 多様性―目的と個人的特性 |
第六章 厚生経済学と不平等 | |
1 | 空間の選択と評価目的 |
2 | 不足分、到達度、潜在性 |
3 | 不平等、厚生、そして正義 |
4 | 厚生に基づく不平等評価 |
第七章 貧しさと豊かさ | |
1 | 不平等と貧困 |
2 | 貧困の性質 |
3 | 所得の「低さ」と「不十分さ」 |
4 | 概念はどれほど重要なのか |
5 | 豊かな国々における貧困 |
第八章 階級、ジェンダー、その他のグループ | |
1 | 階級と分類 |
2 | ジェンダーと不平等 |
3 | 地域間の対照性 |
第九章 平等の要件 | |
1 | 平等に関する問い |
2 | 平等、領域、そして多様性 |
3 | 複数性、不完全性、評価 |
4 | データ、観察、そして有効な自由 |
5 | 総体的観点、平等主義、そして効率性 |
6 | その他の不平等擁護論 |
7 | インセンティブ、多様性、そして平等主義 |
8 | 社会的関心としての平等について |
9 | 責任と公正 |
10 | 潜在能力、自由、そして動機 |
[訳者解説] | |
センの歩み | |
教育者としてのセン | |
翻訳を終えて | |
現代日本の不平等についての議論とセンの不平等論―「現代文庫版訳者あとがき」にかえて | |
参考文献 | |
索引 |