本書は中国の概念史研究の成果をお届けするもので、「キーワードで読む中国古典シリーズ」の第二巻である。
人は人をどのようなものだと考えてきたか。人が行うこの自己規定は、裏を返せば「人ならぬもの」を規定することである。人間世界を規定する条件を論じた第1巻に続き本巻は、鬼(=死者の霊)・禽獣(=動物)・石を手がかりに、幽霊の出没、聖獣の出現、人から動物への変身、子を産む石や食べられる石など不思議で多彩な物語とともに、人を超えた豊かな文化の営みを論じる。
なお、本シリーズは、東洋文化研究所の班研究「中国学における概念マップの再構築」の成果でもある。
総説 (廣瀬玲子) | |
人ならぬものと文 | |
1 |
文と鬼 |
2 |
文と禽獣 |
3 |
文と石 |
第一章 鬼について (廣瀬玲子) | |
1 |
鬼をまつる──『論語』 |
2 |
鬼は存在すると見なすほうがいい──『墨子』 |
3 |
鬼は存在しない──王充『論衡』 |
4 |
鬼に会った話──六朝時代の小説 |
5 |
死後の世界(一)──海上の冥界 |
6 |
死後の世界(二)──泰山 |
7 |
鬼神について──朱熹 |
8 |
冤罪を訴える鬼──元の戯曲「感天動地竇娥冤」 |
9 |
柩のなかへと人を引き込む鬼──明代小説『剪燈新話』より「牡丹燈記」 |
10 |
生き返る鬼──明の戯曲『牡丹亭還魂記』 |
11 |
近代の鬼──過渡性の隠喩 |
第二章 禽獣について (本間次彦) | |
1 |
禽獣とは何か(一)──張載・邵雍・程子 1 張載 2 邵雍 3 程子 |
2 |
禽獣とは何か(二)──朱子 |
3 |
禽獣とは何か(三)──戴震 |
4 |
聖人と禽獣(一)──禽獣の脅威と孔子 1 災害と暴君 2 「聖人の道」と孔子 3 禽獣への転落 4 孔子とは誰か |
5 |
聖人と禽獣(二)──象徴としての鳳凰・麒麟・龍 1 孔子と鳳凰 2 孔子と麒麟と『春秋』 3 帝王と龍 |
6 |
韻文の中の禽獣 1 『詩経』 2 「上林賦」 3 「山居賦」 4 「鵩鳥賦」 |
7 |
散文の中の禽獣 1 『山海経』と鳳凰 2 『聊斎志異』と虎 |
8 |
殺生とユートピア |
第三章 石について (土屋昌明) | |
1 |
啓母石 1 啓母石のいわれ 2 禹の神話 3 禹が熊になるのはなぜか 4 禹が石を蹴飛ばすのはなぜか 5 啓母石はなぜ嵩山にあるのか 6 石から生まれたのは誰か 7 塗山氏が石に化したのはなぜか 8 巨石と女性 |
2 |
黄石公 1 隕石の持つ意味 2 黄石公と張良の師弟関係 3 黄色い石の神秘化 4 黄石公と張良と道教 5 張道陵の神話と張良・黄石公 6 石が書いた本 |
3 |
太湖石と洞天 1 名山と洞窟 2 洞天の特徴 3 洞窟の内部 4 石は食べられる 5 地下でつながる洞天 6 洞天思想の由来 7 再び太湖石の穴へ |
結語 | |
余説 麒麟にみちびかれて──中国古典へのいざない (廣瀬玲子) |
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索引 |
中島隆博 ほかシリーズ編集, 廣瀬玲子【編】+本間次彦+土屋昌明
著
〈シリーズ・キーワードで読む中国古典〉第2巻
『人ならぬもの:鬼・禽獣・石』
法政大学出版局, 262ページ
2015年12月
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