
アジアの環境保護政策は、環境を守るだけでなく、人々の生活にどのような影響を及ぼしてきたのか。従来の環境政策研究は、水、大気、森林、廃棄物といった自然環境を構成する要素の変化に注目する一方で、環境政策が国家や社会、そして地域の人間関係にどのような影響を与えるのかを、十分に正面から捉えてきませんでした。
本書では、日本、タイ、インドネシア、カンボジアなどをフィールドにした資源管理の具体的な事例を通じて、国家による保護や管理が地域住民の利害や住民らの経験知を排除してしまうことで、政策目的がかえって遠ざかってしまうというパラドックスを明らかにします。さらに、そうした反転(inversion)を避けるためには、地域に根付く中間集団を軸に、新たな依存関係を設計することが重要であると論じます。
本書は、筆者の前著『反転する環境国家』(名古屋大学出版会、2019年)の翻訳を母体としつつ、マサチューセッツ工科大学出版局のシリーズ American and Comparative Environmental Policy のエディターおよび査読者からのコメントに応える形で、新たな章を加え、全体を大幅にアップデートしたものです。
世界は、各地の武力紛争に翻弄されるなかで、気候変動や環境汚染といった「静かな脅威」に、ますます深くさらされています。こうした脅威は、災害の頻発という形で現れ、国家により強力な対応を迫ることになるでしょう。本書が、国家による環境保護が現場にもたらしてきた教訓を明らかにし、次の政策を考えるための一助となることを願っています。ご笑覧いただき、ご批判いただければ幸いです。
| Preface | |
| Acknowledgments | |
| Introduction: The Invisible State Power | |
| 1 | Mechanisms: From Dominance over Nature to Dominance over People |
| 2 | Knowledge: A Scientist Stands with Pollution Victims |
| 3 | Exclusion: A Comparative History of Environmental States in Japan and Thailand |
| 4 | Release: The Cambodian Government Relinquishes Control over Fisheries |
| 5 | Compulsion: Maintaining Irrigation Infrastructures in Indonesia |
| 6 | Solutions: The Promise and Challenge of Intermediary Groups |
| Conclusion: Renewing Interdependency | |
| Notes | |
| References | |
| Index |
Jin Sato
Sustainability Inverted: How Environmental Policies Control People
The MIT Press, 304pages, 2026.5, ISBN: 978-0-2620-5343-3