書籍紹介

藏本龍介 編『宗教組織の人類学——宗教はいかに世界を想像/創造しているか』(法藏館)

編著者による紹介

 私たちの生きる世界はどのように想像/創造されているのでしょうか。本書ではこの問題を、アジア・アフリカ地域の様々な「宗教組織」を事例として、民族誌的に検討しています。
 人類学者のグレーバーは、革命の前提として想像力の重要性を説いたマルクスの議論を踏まえ、私たちの生活を生きがいのある、意味あるものにするために、想像力が実用的で不可欠な役割を果たしていることを強調しています。想像上の世界は、ある種の潜在的な力として私たちの行為を意味づけ導く。それによって実際のヒト・モノ・言説の関係を変容させる。つまり世界を創造(組織化)していく。言いかえれば、世界の想像なくして世界の創造はありえないということです。
 本書では、このように私たちが理想の生き方や世界を想像/創造する上で、「宗教」——私たちが何のために、どのように生きるべきか、他者(モノやカネも含む)とどのように関わるべきかという規範を提示する言説——が極めて重要な役割を果たしていることに注目します。そして仏教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、そして本書で「西洋近代教」と呼ぶものを事例として、それがどのような世界を想像/創造しているかを明らかにしています。

目次

序章 宗教組織の人類学に向けて(藏本龍介)
第一章 「善行」が想像/創造する組織―ミャンマーのダバワ瞑想センターを事例として―(藏本龍介)
第二章 「布施のゆくえ」に向き合う仏教組織―現代タイにおける布施、会計、アカウンタビリティ―(岡部真由美)
第三章 フィリピン・カトリック教会の政治参加と社会的影響力―ドゥテルテ政権下における司牧声明の言説分析―(東賢太朗)
第四章 ムスリムを組織化するということ―一九四〇年代から一九六〇年代までのボボ・ジュラソにおけるムスリムの対立をめぐって―(中尾世治)
第五章 イスラーム教育の再創造―ブルキナファソのイスラーム教育機関を事例として―(清水貴夫)
第六章 ヒンドゥー寺院を形作る規範を探求する―インド・ラージャスターン州のラーニー・サティー寺院を事例に―(田中鉄也)
第七章 巡礼地管理と〈政教〉関係―四国遍路および斎場御嶽における管理組織の形成過程と法的規範―(門田岳久)
執筆者紹介

情報

藏本龍介 編 『宗教組織の人類学——宗教はいかに世界を想像/創造しているか』
法藏館, 350ページ 2023年3月 ISBN: 978-4-8318-5651-7
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