1. これまで取り組んできたこと
①ミャンマー仏教研究
・上座部仏教の僧院制度についての民族誌的研究
・現代ミャンマーにおける仏教僧の役割(開発や政治活動など)についての研究
②理論的研究
・贈与(仏教の「布施」を事例として)
・組織(仏教徒組織を事例として)
2. 現在取り組んでいること
①聖典の人類学:「幸せ」とはなにか、「幸せ」になるためにどのように生きるべきか。この人類に普遍的な問題について、各宗教は定式化された言説(=「聖典」)をもっている。これらの「聖典」は常に新たな解釈(=「教義」)へと開かれており、人々の生き方や物質世界に意味をもたらす源泉として、「社会」を(再)創造する基盤となっている。それでは各宗教の「聖典」は、各「社会」においてどのような「教義」として現れているのか。それは逆にどのような「社会」を(再)創造しているのか。現在の研究関心の一つは、こうした「宗教」と「社会」の相互構成的プロセスを、国内外(ミャンマーや日本)における現地調査を通じて民族誌的・歴史的に明らかにすることにある。
②寺院経営の人類学:宗教と経済は相反するものとして捉えられがちである。しかし現実の宗教は、どこまでも経済との密接な関わりの中にある。ある宗教組織が掲げる教えがいかに高邁なものであったとしても、その教えを自己の内外に伝え、浸透させていく(=布教する)ためには、ヒト・モノ(カネを含む)といった資源を獲得・管理・使用するという営み、つまり経営が必要不可欠である。それでは宗教組織は実際にどのように経営されているのか。そこにはどのような特徴や困難があるのか。主にミャンマーの仏教寺院を事例として検討しているほか、日本においては「実験寺院・寳幢寺(https://samgha.org/)」の経営にも関わっている。こうした作業を通じて、仏教の布教メカニズムの一端を解明したいと考えている。この研究を敷衍して、寺院以外の様々な組織(企業やNPOなど)の経営一般についても関心がある。
③生き方の人類学:私たちが、生き生きとした人生や社会をどのように想像/創造できるかという実践的な問題にも関心がある。私は「他者を救う」とか「他者を助ける」という表現があまり好きではない。それは他者を救われる存在、助けられる存在として固定化(場合によっては生産)してしまうように感じるからだ。こうした救う/救われるという二元論を超えたところで、私たちはどのように関わり合い、共に豊かな社会をつくっていけるのだろうか。現在は、上述した「実験寺院・寳幢寺」や、島根発のコミュニティナース(https://community-nurse.jp/)の活動を通して、そのための実践的なヒントを学んでいる。
班研究
ミャンマー近現代史における「国」と「民」
外部資金
科研(基盤B)聖典宗教の人類学:教義のエージェンシーに注目して(2022-2025年度)
科研(基盤B)宗教組織の経営プロセスについての文化人類学的研究(2018-2021年度)
科研(挑戦的萌芽研究)宗教組織の経営についての比較民族誌的研究(2015-2017年度)