少し大胆に言えば、アメリカ外交の動向は今の国際関係を理解するために、いまだ最も重要な分析対象の一つです。そして、アメリカ外交はもとより国内の論争によって決まるところが大きいと言われてきましたが、近年その外交と内政との連関は深まる一方です。本書は、発足して1年あまりが経過したバイデン政権時代のアメリカをどうみるべきか、内政、外交、さらに国際関係の視点から迫る13本の論文を収めています。ソウル大学教授から米韓関係に関して論文も寄せられました。さらに、理解を深めるために2つの大きな鼎談を収録しています。多角的な視野から、バイデン政権だけでなく国際関係の現状をつかむための材料が提供できていれば、と願うばかりです。
はじめに |
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I バイデン政権の世界観 |
バイデン政権の世界観と外交(植木千可子・高橋杉雄・鈴木一人) |
バイデンの非・世界観外交(中山俊宏) |
内政と連動する外交――「中間層外交」を中心に(渡辺将人) |
民主主義重視が意味することとは?(市原麻衣子) |
ミドルクラスのための経済安全保障(鈴木一人) |
多中心的な気候変動ガバナンスにおけるアメリカの国際協調外交(西谷真規子) |
介入しないアメリカ?――新しい世界関与の模索(三牧聖子) |
民主党政権の価値重視外交はどこからくるか(岡山 裕) |
II バイデン外交の実像と世界の対応 |
アジアと世界はどう変わっていくのか(白石 隆・江藤名保子・佐橋 亮) |
大戦略の漂流――冷戦後アメリカの大戦略と対中政策(前田祐司) |
冷戦終結後の米軍の兵力計画の変遷――中露との戦争を想定した計画への移行と今後の展望(福田 毅) |
日米関係の第三の転機――中国と国際秩序をめぐって(佐橋 亮) |
バイデン政権下の米韓関係(辛星昊/益子賢人訳) |
バイデン政権と東南アジア――米中対立の「アリーナ」(神保 謙) |
バイデン政権と欧州――米欧関係はいかに変容し、どこに向かうのか(鶴岡路人) |
おわりに(鈴木一人) |
佐橋亮 ・鈴木一人 編『UP plus バイデンのアメリカ――その世界観と外交』
東京大学出版会, 242ページ 2022年4月 ISBN: 978-4-13-033303-0
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