今、東アジアの秩序は大きく揺らいでいます。米中関係の緊張と対立だけではありません。地域が抱える課題の多さにもかかわらず、各国の能力不足、地域協力の弱さは克服されていません。さらに民主主義の発展にも疑問符がついています。冷戦が終結した後には楽観的な見通しがあったにもかかわらず、なぜこうなってしまったのか。
本書は具体的には次のように問いかけます。各国はどのように秩序を認識し、それを形成しようと構想してきたのか。何が秩序に大きな影響を与えたのか。今行き詰まっているのはなぜか。将来はどうなるのか。こういった疑問に答えるべく、地域研究、国際関係論の研究者を集めて6年にわたり共同研究をしてきた成果が本書です。ぜひお読みいただければと存じます。
序章 東アジア秩序はいかに形成されてきたのか [佐橋亮] |
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はじめに |
1 東アジア秩序──冷戦から冷戦後へ |
2 本書の問いと構成 |
第1章 アメリカと冷戦後の東アジア秩序──1990年代の状況対応的政策とその帰結 [玉置敦彦] |
はじめに |
1 アメリカの「リベラルな国際秩序」構想──起源と展開 |
2 東アジア地域秩序の模索と後退 |
3 現状維持と「平和の配当」の相克 |
4 現状維持を求めて──リベラルな原則と状況対応的政策 |
5 状況対応的政策の限界 |
おわりに |
第2章 アメリカのアジアへの方向転換──2000年代における起源と展開 [ニナ・サイローブ(訳:志田淳二郎)] |
はじめに |
1 アイデアの源流──長期的視野に立ったアジアへの関心 |
2 新しい手段を通じたアジアへの方向転換──グローバルな兵力態勢の見直し |
3 アジアへの方向転換をめぐる省庁間の議論 |
4 アジア・ピボットの実施 |
おわりに |
第3章 冷戦後のオーストラリアの秩序構想と対外政策 [佐竹知彦] |
はじめに |
1 冷戦後のオーストラリアの秩序構想 |
2 冷戦後のオーストラリアの対外政策 |
おわりに |
第4章 日本の東アジア地域秩序構想──冷戦後における継続と変化 [古賀慶] |
1 日本のアジア地域秩序構想 |
2 歴史的制度主義と地域秩序構想 |
3 日本における東アジア地域秩序構想の変遷──4つの時代区分 |
おわりに |
第5章 韓国外交と地域秩序構想 [西野純也] |
はじめに |
1 冷戦終結への対応とその限界──盧泰愚,金泳三政権 |
2 地域協力構想と安全保障の制約──金大中,盧武鉉政権 |
3 米中G2のもとでの秩序構想──李明博,朴槿恵政権 |
4 「平和と繁栄の朝鮮半島」──文在寅政権 |
おわりに |
第6章 ASEANの地域秩序構想とその実践──南シナ海におけるルール形成の取り組みを中心に [湯澤武] |
はじめに |
1 ASEANの地域秩序構想と役割認識の変遷 |
2 南シナ海におけるASEANのルール形成の取り組み |
3 ASEAN主導のルール形成の効用と限界 |
おわりに |
第7章 インドの複層的秩序認識と対外戦略 [溜和敏] |
はじめに |
1 3つの秩序──地域,拡大近隣,世界 |
2 冷戦終結後の対外戦略と秩序認識 |
おわりに |
第8章 ロシアの国際秩序構想──孤立の克服から東方シフトへ [加藤美保子] |
はじめに |
1 冷戦終結後のソ連/ロシアの世界認識と秩序構想 |
2 ロシアのアジア安全保障秩序観と日米同盟 |
おわりに |
第9章 中国の新同盟論──安全保障秩序の新たな制度戦略 [林載桓] |
はじめに |
1 中国の国際秩序観の特徴 |
2 国際秩序の制度的基盤と中国 |
3 中国の同盟認識の変容と「新同盟論」 |
4 ディスカッション──秩序再編の制度戦略 |
おわりに |
終章 秩序をめぐる東アジアの国際政治 [佐橋亮] |
はじめに |
1 本書の議論 |
2 トランプ外交と米中対立により高まる秩序移行の可能性 |
3 将来における東アジア秩序 |
4 日本に必要な秩序構想力 |
あとがき |
索引 |
執筆者紹介 |
佐橋亮
編著
『冷戦後の東アジア秩序 ―秩序形成をめぐる各国の構想―』
勁草書房, 312ページ
2020年3月