「世界哲学」という新しい概念は、これまでの欧米中心的な哲学観を揺さぶりながら、その他の地域の哲学を普遍的なものに向かって開こうとする発見的な概念です。それを「世界哲学史」という歴史的な編成によって示そうとするのが、この『世界哲学史』全8巻のシリーズの意図です。「世界」、「哲学」、「歴史」という概念が問い直され、結び直されるダイナミズムが表現されるはずです。東アジア藝文書院からは、中島隆博を含めて、納富信留先生、石井剛先生に寄稿していただいております。
第二巻では、キリスト教、仏教、ゾロアスター教、マニ教といった諸宗教が世界を循環し始め、世界哲学が成立し展開する時期を扱っています。
| はじめに 納富信留 |
|---|
| 第1章 哲学の世界化と制度・伝統 納富信留 |
| 1 古代とは何か |
| 2 哲学と非哲学 |
| 3 学校と学派 |
| 第2章 ローマに入った哲学 近藤智彦 |
| 1 トガを着た哲学 |
| 2 ローマ哲学事始 |
| 3 ラテン語による哲学 |
| 4 生の技法としての哲学 |
| 第3章 キリスト教の成立 戸田 聡 |
| 1 哲学史の中の古代キリスト教? |
| 2 「キリスト教のギリシア化」―グノーシス主義と護教家 |
| 3 キリスト教の教義の歴史―小史 |
| 4 「哲学」としてのキリスト教 |
| 第4章 大乗仏教の成立 下田正弘 |
| 1 本章の問題系―歴史哲学としての問い |
| 2 大乗教団の不在とテクストとしての大乗仏教 |
| 3 大乗経典研究と歴史研究 |
| 第5章 古典中国の成立 渡邉義浩 |
| 1 古典中国とは何か |
| 2 法家から儒家へ |
| 3 儒教国教化の完成 |
| 第6章 仏教と儒教の論争 中島隆博 |
| 1 仏教伝来 |
| 2 魏晋玄学 |
| 3 華北と江南の仏教 |
| 4 神滅不滅論争 |
| 第7章 ゾロアスター教とマニ教 青木 健 |
| 1 世界哲学史と三~六世紀のペルシア |
| 2 ザラスシュトラの一神教的二元論 |
| 3 マニ教の厭世的二元論 |
| 4 ゾロアスター教の楽観的二元論 |
| 第8章 プラトン主義の伝統 西村洋平 |
| 1 前一世紀から後六世紀までのプラトン主義 |
| 2 注釈の伝統 |
| 3 プラトン主義の基本思想 |
| 3 プラトン主義を生きる |
| 第9章 東方教父の伝統 土橋茂樹 |
| 1 教父以前 |
| 2 東方教父におけるキリスト教の神性をめぐる論争 |
| 3 「神に似ること」と「神化」 |
| 第10章 ラテン教父とアウグスティヌス 出村和彦 |
| 1 はじめに―アウグスティヌスの神の探求 |
| 2 内的超越 |
| 3 善悪二元論と自由意志 |
| 4 原罪・根源悪と人類の絆 |
| コラム1 アレクサンドリア文献学 出村みや子 |
| コラム2 ユリアヌスの「生きられた哲学」 中西恭子 |
| コラム3 ジョゼフ・ニーダムの見いだしたこと 塚原東吾 |
| あとがき 納富信留 |
| 編・執筆者紹介 |
| 年表 |
| 人名索引 |
伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留
責任編集
『世界哲学史2―古代Ⅱ 世界哲学の成立と展開』
ちくま新書, 288ページ
2020年2月