人類はその歴史のなかでたくさんのことを語り、書いてきました。それらは全て人類全体の財産であり、さまざまな環境のなかで懸命に生きてきた人々の証です。
そうした無限ともいえる語られたもの、書かれたものから世界史を見直してみようというのがこの本の主旨です。ある時代のある地域を代表するとされる名著を120点取り上げ、専門家による分かりやすい解説をつけました。新旧東西の名著が映すそれぞれが書かれた社会の様子、いろいろな名著を見比べるなかから見えてくる人類共通の関心事や性向など、いろいろな発見の芽を含んだ本になっていればと思います。
では「名著」とは一体なんでしょう。囲炉裏端で語り継がれてきたような昔話は「名著」なのでしょうか。「名著」というと著者がいないといけないような気がしますが、三年寝太郎に、「著者」なんて一体いるのでしょうか。少し考えれば分かるように、この「そもそも論」は、実はとても本質的なことを問うています。そう、「名著」なる概念も、よくあるように、ある時代のある環境において主観的に考え出され、色々なものに当てはめられた概念の一つに過ぎないのです。では、この本は、この問題とどのように取り組んだのでしょうか。
自覚的に取り組まなかった。これが答えです。この本では山川出版社の詳説世界史で、重要な本として題名が挙げられているものを中心に「名著」をピックアップしました。そういう意味で、21世紀初めの日本においてヘゲモニーをもっている(とまずは考えられる)世界認識と歴史認識のなかでの「名著」が紹介されていることになります。東文研のホームページをご覧いただくような方々にとっては、教科書で題名だけは見たことがあるけど中身は一体どんなものなんだろう、というような関心からだけでなく、一体いまの日本で世界史上の「名著」とされているもののラインアップにはどういう特徴と問題があるかというような視点から見てもらえる本にもなっていると思います。どうぞよろしくお願いいたします。
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