書籍紹介

平勢 隆郎 著 『「八紘」とは何か 』

著者からの紹介

 

【序より】(抜粋)
  學恩を感謝する諸先生の中でも、西嶋定生先生は特別である。
  西嶋先生の講義を通して、始皇帝統一を境に、封建の世から郡縣の世への變化が議論されることはわかったが、一方、すでに檢討しはじめていた『左傳』の述べる封建と異質な部分があることにも氣づいた。そしてその異質な部分に、多くの人々が氣づいていないし、自らも實は氣づいていなかったのだということがわかるのには、隨分と時間を要した。先生の講義を通して、黄老思想の影響下にあった前漢の中央が儒教を重視するにいたり、その儒教がさらに變化していくこと、そこに皇帝と儒教の關わりが議論されること、その儒教の經典を基礎とする禮教主義が册封體制を支えたことを學んだ。しかし、世の人々が西嶋册封體制論を論じる際に、なぜかこの禮教主義の議論が拔け落ちていることを自覺するのにも、そしてその儒教經典に在する問題性に氣づくのにも、隨分と時間を要した。こうした自覺にいたるまでの過程で、さらに多くのことを學び、試行錯誤をくりかえした。本書は、こうした試行錯誤の結果として世に送り出される。本書は中國について、大領域・中領域・小領域を論じる。中領域に注目する視點が、議論の要に据えられている。

目次

序説 「封建」論・「八紘」論・「五服」論の要點

第一章 「八紘」論と「五服」論
第一節  游侠の「儒」化とは何か――豪族石碑出現の背景――
第二節  南方の守神としての朱雀
第三節 「三合」、十二方位による五行生成説と五徳終始説
第四節 「五服」論の生成と展開
第五節 『論語』の天下觀、『孟子』の天下觀、『禮記』の天下觀――「天下の正統」を理解するために――

第二章 「八紘」論と「封建」論
第一節  中國戰國時代の國家領域と山林藪澤論
第二節  上博楚簡『天子建州』と「封建」論
第三節  戰國時代の天下とその下の中國、夏等特別領域
〈補〉  戰國期「封建」論、特別地域論、五服論と孔子――上博楚簡『天子建州』の成書國を檢討するために――

第三章 説話の時代
第一節  周初年代諸説
   [別添] 古代紀年と暦に關するチェックポイント
第二節  大國・小國の關係と漢字傳播
第三節  中國古代における説話(故事)の成立とその展開
   [別表]
第四節  先秦兩漢の禮樂の變遷――孔子の時代の樂を知るために――
 
結びにかえて
あとがき
英文要旨・中文要旨・索引

情報

平勢 隆郎東洋文化研究所紀要別冊 『「八紘」とは何か』 汲古書院,   770ページ
2012年3月 ISBN: 9784762929816

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