これまで外国の地を対象に現代的諸問題の勉強をしてきた私が、はじめて日本のたどってきた道を振り返ってみたのが本書です。「持たざる国」を標榜してきた日本では、狭い国土と過密人口ゆえに、資源のあり方を問い直す長い伝統がありました。戦後の貧しい時代に、それは「資源論」として豊かに花開きました。しかし、その後の高度経済成長を経て豊かになった日本では、公害や環境問題という視角が盛んになった陰で、もっと根本的な次元における人間と自然の関係を問う「資源論」は忘れ去られました。資源は人間の経済と自然との相互作用を考える要となる概念です。決して実現しなかった「不発のアイデア」としての資源論とは何だったのか。先の震災は、日本の「資源」が何であるかを改めて考えさせる機会となりました。歴史に軸足を置くこの本が未来を切り開く議論の端緒になることを願っています。
はじめに | |
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序 章 | 資源問題とは何か |
第1章 | 資源と富源―その始まりと日本近代 |
第2章 | 国家的課題としての資源―戦前の動員と戦後の民主化 |
第3章 | 資源調査会という実験―中進国日本の試み |
第4章 | ”持たざる国“の資源放棄―国際社会と経済自立への道 |
第5章 | 資源論の離陸―高度成長期と地理学者らの挑戦 |
終 章 | 可能性としての資源 |
あとがき |