現在、世界中に広がっているすべての仏教の根拠は、今から2500年以上前、北インドを中心に活躍したゴータマ・ブッダ(釈迦牟尼仏)の教えにあります。しかしブッダの教えは決して固定的・一義的なものではありません。「幸せ」とはなにか。なぜ私たちの人生には「不幸」が訪れるのか。「幸せ」になるためにはどのように生きればいいのか。こうした問いに答えるべく、ブッダの教えは各時代・地域を生きる人たちによって、常に再解釈される可能性に開かれています。それはその都度、理想的な世界を「想像」するという営みにほかなりません。そしてこの想像上の世界は、私たちの行動を動機づけ、方向づけることによって、現実の世界を「創造」していきます。
このようにブッダの教えを再解釈することによって、新たな世界を想像/創造しようとする営みのことを、本書では「仏教経営」と呼んでいます。では、仏教徒たちは実際にどのように仏教を「経営」しているのでしょうか。この問題を考えるために本書では、ミャンマーおよび日本の3つの寺院を事例として取り上げています。いずれも、ブッダの教えの再解釈を通じて、試行錯誤しながら新しい世界を想像/創造しようとしている実験的な寺院(実験寺院)です。私はこれらの寺院に研究者・修行者・経営者として関わってきました。本書はこうした経験に基づく人類学的記録です。
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