沖縄研究のパイオニアである伊波普猷(1876−1947)という思想家の名前は、それほど有名ではないかもしれません。
しかし、1879年のいわゆる「琉球処分」によって、大日本帝国の版図へと組み込まれた「琉球・沖縄」が辿ってきた道程は、伊波普猷のテクストなしには知ることができません。
本書では特に、「日琉同祖論」(「日本」と「琉球・沖縄」が同一のルーツを持つとする主張)という問題含みの言説を分析対象としています。
伊波の「日琉同祖論」を、擁護/批判という二項対立的図式で理解するのではなく、その主張の背景にある歴史(文化・政治・経済など、あらゆる領域が複雑に交差する織物としての歴史)を踏まえながら、その思想的可能性および限界を、脱構築的読解によって浮かび上がらせることに注力しました。
不完全な一冊ですが、本書が「沖縄」と出会う一つの契機となることを願っています。
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