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教員の著作が刊行されました
馬場 紀寿 著『仏教の正統と異端――パーリ・コスモポリスの成立』(東京大学出版会)

著者による紹介

 高校「世界史」の教科書で「仏教」にかんするページを開けば、「大乗仏教」と「上座部仏教」という二種類の仏教が存在したことが説明されています。教科書だけではありません。仏教学の研究書でも同様の説明がしばしばされています。しかし、近代以前の文献に、「大乗仏教」(Mahāyāna Buddhism)と「上座部仏教」(Theravāda Buddhism)という概念はまったく存在しませんでした。あたかもこの二種類の仏教が歴史上に存在し、両者が脈々と存続してきたかのような言説は、近代に生まれたものなのです。
 それでは、「大乗仏教」や「上座部仏教」という近代製の分類概念を用いずに、南アジアと東南アジアの仏教史全体を捉え直すには、どうすればよいのでしょうか。本書は、サンスクリット語からパーリ語への言語の転換に焦点を当てて、スリランカと東南アジアに成立したパーリ語の国際空間――本書で「パーリ・コスモポリス」と命名――を論じたものです。パーリ・コスモポリスの成立にかかわるパーリ仏典の文献学的分析をしつつ、およそ1世紀から20世紀に到る南アジア・東南アジア仏教史を時系列に沿ってまとめました。
 ベンガル湾を介して南アジアと東南アジアに広がった、聖なる言語のコスモポリスが、21世紀に到ってなお国民国家の戦争で多数の血を流している現代社会に与える示唆は、小さいものではありません。

 


著者・訳者紹介や目次等、詳細情報は 教員の著作コーナーに掲載した記事をご覧ください。



登録種別:研究活動記録
登録日時:MonApr415:07:432022
登録者 :馬場、田川、野久保、廣田
掲載期間:20220405 - 20231231
当日期間:20220301 - 20220301