外部資金による研究
文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査
当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。
- 藏本 龍介
- 基盤研究(B)
- 聖典宗教の人類学:教義のエージェンシーに注目して (2022~2025年度)
- 研究分担者
- 高野 さやか, 岡部 真由美, 中尾 世治, 石森 大知, 門田 岳久, 金子 亜美
- 研究の目的
- 本研究では、「(聖典)宗教」を「社会」の想像/創造を可能にする「教義」、「社会」を「教義」の探究を通じて結びついたヒト・モノのネットワークと定義する。こうした方法論的視点から本研究では、仏教、キリスト教、イスラム教および「聖典化」した民間伝承を事例として、「宗教」と「社会」の相互構成的プロセスを、現地調査を通じて民族誌的・歴史的に明らかにする。同時に、その成果を相互に比較検討することによって、「聖典」をもつということがこのプロセスをどのように特徴づけているかという問題について、より一般的な答えを提示する。こうした作業を通じて、仏教・キリスト教・イスラム教に関する学術的研究だけでなく、人類学・宗教学一般に対する理論的貢献を目指す。
- 森本 一夫
- 基盤研究(B)
- 「スンナ派」と「シーア派」:自己意識と相互認識のイスラーム史研究にむけて(2023~2026年度)
- 研究分担者
- 新井和広, 河原弥生, 二宮文子, 森山央朗
- 研究の目的
- 本研究は、イスラーム史上のさまざまな場に現れ「スンナ派」「シーア派」と名乗った/他から呼ばれたさまざまな集団や個人のより適切な理解、同じくしばしば見られる「両宗派混淆」とされる状況のより正確な解釈を目指し、さまざまな時代や地域に生きた人々の「スンナ派」あるいは「シーア派」としての自己意識と相互認識を研究する。これは、「スンナ派」「シーア派」という呼び名が惹起する画一的な性格づけ(教義や実践に関する「教科書的な知識」による)の弊害を逃れ、重要な変化の時代に現れることが多かったそのような集団・個人・状況をより良く理解しようとする試みである。
- 佐橋 亮
- 基盤研究(B)
- 東アジア国際秩序の歴史的形成過程:非西洋国際関係論と地域研究の接合(2024~2026年度)
- 研究分担者
- 向山 直佑, 高橋 慶吉, 青野 利彦, 佐竹 知彦, タンシンマンコン パッタジット, ロート アントワン, クーン フェリックス
- 研究の目的
- 本研究の目的は、東アジアにおける国際秩序の歴史的形成過程を、近代以前までを分析対象に含め、従来よりも長いタイムスパンを取って分析することで明らかにし、そこから今後の地域秩序に関する示唆を見出すことである。 戦後の東アジアにおいて支配的地位を確立してきた米国が中国およびアジア各国の成長によって相対化される可能性が高い将来において、秩序がどのように変容するのかという問題は、国際政治研究者のみならず、政策担当者や一般市民の関心も高いトピックであるが、これに対して米国の影響力が低かった過去の秩序を参照点にすることで、重要なヒントを与えることができる。
- 真鍋 祐子
- 基盤研究(B)
- 東アジア地域秩序における構造的暴力と社会運動の生成に関する歴史社会学的研究(2025~2028年度)
- 研究分担者
- 金子 毅 , 徐 淑子 , 井沢 泰樹
- 研究の目的
- 本研究の最終的な問題意識は、韓国やカンボジアにおける当事者主体の社会運動との比較を通して、日本の社会運動から「敵対性」を希薄化させ、社会変革を阻害する日本社会の構造的要因が何であるか、それは東アジア地域秩序という変数によっていかに構築されたのか、だが冷戦後日本のマジョリティにも実は透明化された「敵対性」が見出せるのではないか、という点にある。 これらの問いを解明する作業を通し、本研究は国民国家を暗黙の単位とした従来の社会運動研究に対し、東アジア地域秩序の末端にいる構造的暴力の当事者が社会運動を志向する「意味の再構築」を問うことで、大胆なパラダイム変換による社会運動研究の方法論の再構築をめざす。
- 板倉 聖哲
- 基盤研究(B)
- 中国絵画コレクションの移動と現在(2025~2029年度)
- 研究分担者
- 塚本 麿充, 井手 誠之輔, 森橋 なつみ, 植松 瑞希, 呉 孟晋
- 研究の目的
- 本研究では、世界中に分蔵される中国絵画の所在情報を収集・把握し、調査・撮影を行い、斯学における新たなプラットフォームとして公開する。さらに、過去の伝来情報も改めて調査することで、どのような形で流通・伝播したかを可視化する。 中国絵画は中国のみならず韓国・日本など東アジア絵画のカノンとされるが、現在に至るまでの伝来情報が公開されることで、東アジアにおける絵画の再構築が見えてくる。
- 菅 豊
- 基盤研究(B)
- ヴァナキュラー文化研究の深化と展開―グローバルな民俗学的転回に呼応する―(2026~2028年度)
- 研究分担者
- 西村 明,塚原 伸治,川田 牧人,俵木 悟,加藤 幸治,志村 真幸,河野 正治,村上 晶
- 研究の目的
- 現在、世界各国の民俗学では多様な現代的文化現象に対応するなか、「伝統」という烙印を押されたフォークロア(folklore、民俗)に代えて、ヴァナキュラー(vernacular)をキーワードとする文化研究が試みられている。ヴァナキュラー文化は、無名の人々が日常生活のなかで身の周りにあるものを巧く使いこなす技芸と知識、創造力、そして情意が埋め込まれた文化である。本研究はそのヴァナキュラー文化の研究を深化させることにより、これまでの民俗学のスタティックな伝統観を見直すとともに、ダイナミックな「いま」の文化現象をその民俗学研究の視野に収め、活気のある新しい研究領域を生み出し、さらにヴァナキュラー文化研究のプラットフォームを構築し協働的な研究と討論を行うことで、将来的に世界のヴァナキュラー文化研究を牽引するネットワークの起点を形作ることを目的としている。
- 松田 康博
- 基盤研究(B)
- 「戦う民主主義」のダイナミズム―台湾政治と中台関係の実証研究―(2026~2028年度)
- 研究分担者
- 佐藤 幸人,川上 桃子,松本 充豊,緒方 健,黄 偉修,福田 円,鶴園 裕基
- 研究の目的
- 本研究は、中国による「認知戦」の最前線にある台湾を対象に、民主主義の質を維持しながらいかにして外部からの介入や情報操作に対抗して いるか、いわゆる「戦う民主主義」の動態を実証的に解明することを目的とする 。中国のシャープパワーが台湾のアイデンティティやナショ ナリズムに与える影響を、SNS等のビッグデータ分析と現地での聞き取り調査を組み合わせて多角的に分析する 。これにより、台湾における「 戦う民主主義」の成否が、中台関係および台中米の三画関係の安定性にどのような影響を及ぼすのかを明らかにし、偽情報が蔓延する現代社会 における民主主義防衛のモデルを提示することを目指す。
- 名和 克郎
- 基盤研究 (C)
- ネパール、ドラカ郡における震災後の居住実践の中期的変遷に関する映像人類学的研究 (2023~2025年度)
- 研究分担者
- KHAREL DIPESH
- 研究の目的
- 本研究は、ネパール、ドラカ郡アランプ村の事例を通して、耐震性の観点から建物 の設計や工法に多くの規制がかかった2015年大震災後のネパールにおいて、人々が、耐震 性は高いがより狭く、機能的にも美的にも問題が指摘されることの多い耐震住宅を、いか に受け入れ、 そこでいかなる居住実践を行ってきたかを、震災以前からの居住環境の中期 的変遷を踏まえて明らかにする研究である。技法的には、通常の民族誌的フィールドワー クに加えて映像人類学的手法を用いる。震災後ネパールに関する既存の人類学的・民族誌 的研究に対する独自の貢献に加え、T.インゴルドの「建てる」と「棲まう」の概念を暫定 的に用いて現状の複雑さを理論的に示すこと、また、より実践に近い課題として、耐震住 宅を人々が受け入れていく条件の一例を提示することもまた、目指されている。
- 渡邉 祥子
- 基盤研究 (C)
- イスラーム教育の社会的機能に関する国際共同研究:後期植民地期アルジェリアの事例 (2024~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- パットナムやブルデューらによって提唱された社会関係資本(文化資本)論におい ては近年、ジェンダーやエスニシティによる資本の種類の相 違について様々な指摘がなさ れてきた。例えば、支配的な文化資本とコミュニティ・ベースの文化資本とを区別する議 論や、移民の出身文化と 移民先の支配文化との関係論が、先進国の事例を基に展開されて きた。また、ジェンダーによる社会関係資本の質の差異については、男性より も女性の方 がインフォーマルな社会的なネットワークとケア領域における活動に依拠しやすい点も指 摘されている。本研究は、植民地期アルジ ェリアでアラビア語教育を行った私立学校 (自由マドラサ)の経済的基盤に関する実証的分析を進めるとともに、こうした社会学の 知見を取り 入れ、イスラーム地域におけるマドラサやコーラン学校の多様な社会的役割と レジリエンスに関するイスラーム地域研究・人類学研究の議論に 貢献することを目的とする。
- 佐藤 仁
- 基盤研究 (C)
- 世界から見た日本の開発学:その体系化と教材化 (2024~2026年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、日本の開発経験を基盤に新たな体系を構築し、教科書としてまとめること を目的とする。貧困削減や気候変動への適応といった具 体的な課題は、その成果に注目が 集まるために、どのような「プロセス」から成果が導かれたのかという点が看過されがち である。応募者は、 地域に固有の開発概念を含む文化や価値観が、このプロセスを大きく 左右すると考える。つまり、同じ投入(技術や資金)であっても、成果ま での回路が地域の 文脈によって異なる可能性があり、この回路の選び方によって、格差や不平等、開発の副作用 など、プロセスに伴う新たな課 題を抑制できる見通しが立つのではないかと考えている。
- 辻 大和
- 基盤研究 (C)
- 近世朝鮮における薬用植物の利用・流通・消費 (2023~2026年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は17~19世紀にかけての朝鮮における、薬用植物の利用・流通・消費の解明を目的とする。近世の東アジアでは薬用植物の生産と流通が拡大したが、その朝鮮での医療用以外の消費拡大の背景について、医食同源の日常生活における利用状況を探る。開始年度はデータベースや公刊史料を用いた国内での調査を中心とし、2年度目以降は1年に1,2回程度海外での未公刊史料調査を予定する。本研究は世界的に注目される植物資源の利用史について、朝鮮半島の事例を提示する。また、韓国の歴史ドラマや映画により朝鮮王朝に対する関心の高まっている日本社会に成果を提供し、日本における朝鮮王朝史理解を深める。
- 梅村 尚樹
- 基盤研究 (C)
- 文集史料から見た10~14世紀中国における士大夫社会の変遷(2023~2028年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 10世紀以降の中国は、士大夫層が政治・社会・文化の各方面で重要な役割を果たしたと言われるが、その具体的変遷がどのようなものであったのかは、いまだ十分明らかになっていない。とくに、宋代に形成された士大夫社会の様相が、元代になってモンゴルに統治されてもなお継続し、明代へと接続していった理由は、十分に明らかにされていない。 本研究は、朱子学の展開と浸透を軸としながら、主に士大夫個人が書いた文章である文集史料を利用して解明するものである。とくに「記」という一連の史料群を網羅的・統計的に分析することで、宋から明初に至る中国社会の変遷を、社会文化・思想文化の面から描くことを目的とする。
- 青山 和佳
- 基盤研究 (C)
- スローバイオレンスを可視化する回復の文学の創成:鉱害を生きるミンダナオの女性たち(2025~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- フィリピン・ミンダナオ東部では、鉱山閉山後の住民生活が可視化されず、「スローバイオレンス」が進行している。被害は数値では捉えきれず、尊厳や感情、生き延びる試みが存在するため、人文学的アプローチが必要である。本研究は、カマンラガン村で閉山後も続く環境破壊の中を生きる女性たちの痛みを掬い、「回復の文学」を実践する。聞き書きワークショップを行い、「スローバイオレンス」を可視化し、国内外に発信する。
- 小寺 敦
- 基盤研究 (C)
- 先秦時代楚地域における世界観の形成と展開:清華簡による総合的文化理解の試み(2025~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 新発見の出土文献である清華簡『五紀』『参不韋』により、先秦時代の思想を総合的・体系的に分析し、先秦時代の思想が有していたが、秦漢 時代以降に発展の芽が摘まれた、天・人の関係を始めとする総合的・体系的な思想様式=世界観の実態を歴史学的視点により解明する。そこで 得られた知見に基づき、先秦時代が有していた思想・文化の発展可能性を探求しつつ、中国古代の思想・文化理解に対する新たな側面からの貢 献を目指す。
- 秋葉 淳
- 基盤研究 (C)
- オスマン帝国における法廷とジェンダー(2025~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、オスマン帝国の法廷文書をジェンダーの視点から読み解くことにより、オスマン帝国社会におけるジェンダー関係を再考する研究で ある。具体的には、18世紀オスマン帝国下のアナトリア地方の法廷台帳を利用し、訴訟、婚姻・離婚、暴力という3つのサブテーマに関して、 法廷台帳の批判的分析を通じて、地方社会におけるジェンダー関係と女性のエージェンシー(行為主体性)を探究する。すなわち、法廷におい てジェンダーをめぐる問題がどのように現れ、そこに女性の主体的意図や行動が読み取れるのか、という問題を考察し、オスマン帝国ジェンダ ー史・法社会史に独自の貢献をすることをめざす。
- 古井 龍介
- 基盤研究 (C)
- 中世初期北インドの新たな政治史:統合的歴史叙述への試み(2025~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、中世初期北インドの政治史を、環境と歴史的過程の差異により、相異なる資源と統治システムを有するに至った諸地域勢力間の相互作用として、新たに叙述する。具体的には、中世初期の北インドに興った各地域勢力、特にパーラ朝と隣接諸勢力の交渉・抗争を、それらによる資源の経済的・軍事的利用・動員の態様や各地域の社会経済的構造変動と関連付けて叙述する。また、南アジア諸地域と内陸アジア・西アジア・東南アジアとの接続の在り方と、統治システムや資源動員へのその影響も、叙述の重要な要素として取り入れる。インド・バングラデシュ・欧州での現地調査による新出碑文史料の発見・校訂にも努め、それらを叙述に包含する。
- 田中 有紀
- 基盤研究 (C)
- 中国思想から考える新しい倫理と技術の関係:江永の礼学体系における技術と制度(2025~2028年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、清代の江永(1681-1762)の技術や制度に関する記述(天文暦法、数学、音韻学、地理学など)を分析し、それらを支える彼の経学(経書解釈の学問)も合わせて論理構造を明らかにした上で、朱子学との距離を分析しながら、彼の礼学の枠組みの中でどう位置づけられるかを検討する。代表者は以前、清代の思想家の天文暦法理論と江永のそれを比較し、中国においてどのように技術を問うのかを考察し、新たな技術哲学の枠組みを提示した。本研究では江永自身の思想を内在的に分析することに注力し、彼の技術論や制度論などの「道問学」が朱子学における「尊徳性」とどう関わるのか、その論理構造と礼学との関係を明らかにする。
- 菊池 百里子
- 基盤研究 (C)
- パラオにおける日本関連遺産の調査研究ーデータベースの構築と公開ー(2025~2027年度)
- 研究分担者
- 菊池 誠一, 小西 潤子
- 研究の目的
- パラオへは1920~終戦までの間に多くの日本人が移住した。当時の日本がもたらした多様な日本関連遺産は、現在、崩壊、消失の危機にある。その全容把握のための調査、資料収集を実施し、現状や歴史的文化的真正性の評価をおこなうとともに、日本関連遺産コレクションをデータベースとして構築、公開する。
- 園田 茂人
- 基盤研究 (C)
- 中国人従業員による日本企業評価の30年:その日本への波及効果に関する社会学的研究(2026~2028年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 日本企業の衰退は中国経済の台頭と関連しているとする議論は多いが、30年に及ぶ日本企業の中国進出の歴史と経験は、日本国内の雇用をめぐる問題と関連づけられて研究されていない。日中間で多くの管理職、従業員が移動してきた経緯を考えると、両者を架橋する視点が必要である。 そこで本研究では「国内で『失われた30年』を経験してきた在中国日本企業やその日本的経営が、中国人従業員にどのように評価されてきたのか、そしてそれが海外法人の運営にどのようなインパクトを与えたか」、「中国における日本企業への評価や中国での人的資源管理の経験、中国から日本への人流の増加が、日本国内における人材育成にどのような影響を及ぼしたのか」を明らかにすべく、在中国日本企業の中国人従業員や日本人駐在員への意識調査やインタビューを通じて分析し、ビジネス人流の増加がもたらす「越境効果」を提示することを目的とする。
- 小川 道大
- 基盤研究 (C)
- 私文書分析によるインド植民地化の再考 18-19世紀のインド西部の郷主に注目して(2026~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究の目的は、私文書を用いてインドの植民地化を再考することである。18世紀にインド西部を支配したマラーター勢力については、数多くの現地語史料が残されており、この史料と、英語史料を組み合わせて、1818年に始まるインド西部の植民地化の過程を代表者は研究してきた。しかしその文書のほぼ全てが、マラーター政府、またはイギリス東インド会社政府が発行した公文書であった。インドの植民地化の歴史をより多視的に捉えるために、在地有力者が作成した現地語の私文書を収集し、分析することが本研究の目的である。そのために代表者は、インドの私設図書館、研究所、農村などをめぐり、私文書を収集する。 私文書は、その出所が確かでないものが多いため、公文書を用いて丁寧にその裏付けを行う。そのためにプネ―およびムンバイの州立公文書館、デリーのインド国立公文書館、ロンドンの大英図書館で関連する公文書の収集・分析を行う。
- 柳 幹康
- 基盤研究 (C)
- 中国禅宗史書の研究(2026~2030年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究の目的は、「五灯」から『五灯会元』に至る禅宗史書について、それぞれの歴史観とその変遷を解明することにある。 「五灯」とは①『景徳伝灯録』、②『天聖広灯録』、③『建中靖国続灯録』、④『聯灯会要』、⑤『嘉泰普灯録』という五種の「灯録」を指し、「灯録」とは灯から灯へと火を伝えるがごとく仏の心を代々伝えてきた記録、すなわち禅宗史書を意味する。禅宗にとって仏心を伝える系譜はその正統性の根拠となる重要なものであるため、それを記す歴史書が数多く編まれてきた。そのなかでも今日まで共有される「五家七宗」の枠組みを最初に採用した灯録が『五灯会元』であり、それは先行する「五灯」を統合するものであった。 以上6部はいずれも大部の著であり、その全体の歴史観を分析した研究は見当たらない。それに対し本研究では各書ごとに構造解析を行なうことでその歴史観を解明するとともに、『五灯会元』に至るまでの変遷を跡付ける。
- 秋葉 淳
- 研究成果公開事業
(学術図書)
- 「オスマン帝国の法廷とジェンダー」(2026年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本書の目的は、オスマン帝国の法廷史料をジェンダーの視点から読み解くことにより、オスマン帝国社会におけるジェンダー関係と女性のエージェンシー(行為主体性)が法廷においてどのように現れるのかを明らかにし、法廷史料の新しい解釈を提示することである。 具体的には、18世紀のアンカラとコンヤという二つの地方都市の法廷台帳を利用し、財産、婚姻、暴力といった諸局面に着目する。そして、法廷文書の受領者すなわち請求者に着目するという独自のアプローチを導入することにより、オスマン帝国のシャリーア法廷研究及び、ジェンダー史研究に新たな展望をもたらすことを目指している。 また、本書には、オスマン帝国法廷台帳の批判的読みを通じたジェンダー史研究の成果を初めて日本の読者に提供するという狙いもある。それは、日本の中東・イスラーム史、ジェンダー史、法社会史研究などの領域に新しい知見と研究視角を提示するものである。
- 高橋 知子
- 若手研究
- 国際制度のオルタナティブ:中国を中心とした東アジア・東南アジアの試み(2025~2030年度)
- 研究の目的
- 本研究は、国際関係論の分野において、中国を中心とする東・東南アジア諸国が構想したが、実現しなかった国際制度について取り上げる。既存の研究では、欧米が中心となって実現した国際制度としての国連などの枠組みを前提として、理論が構築されているが、本研究では、国際制度のオルタナティブをめぐる資料を収集する。理論的には、それらの国が、固定的な利益だけではなく、代替的な国際制度の可能性をめぐる認識の情報共有や流動性にも影響され、自らの主権・安全保障・経済に適うかを考えて来たことを明らかにする。実証的には、非西欧諸国をめぐる資料について、定性的・定量的に明らかにするものである。
- 上田 遥
- 若手研究
- 新たな時代の東アジア食文化論:「食の再帰的近代」の実証分析(2025~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 食文化研究の父・石毛直道が「東アジア食文化論」を提唱してから半世紀が経過したいま、その成果を総括しつつ、食の貧困や環境破壊など、現代課題の解決に直結する学問へと開いていかなければならない。従来の東アジア食文化研究は、特定食品の起源や伝播の歴史学・人類学的探求を中心としており、近代以降の食文化発展の研究を後回しにしてきた。本研究では、これまで疎外されてきた社会学・経済学・哲学的視座から「食の近代化」を問い直す新たな東アジア食文化論を構想する。本研究では、(1)食の豊かさと崩食、(2)タンパク質転換という今日的課題を2つとりあげ、日本・中国・台湾・韓国を中心とする東アジア比較研究に取り組む。そのほか「茶」のように優れて文化的な性格をもつ品目別実証分析も適宜行う。日本、そして東アジアの食文化は人類にとってどのような普遍的示唆を持つか。石毛が当初提起した根本的問題に新たな視点から挑戦する。
- 孟 碩洋
- 若手研究
- Transnational academic mobility and career development: Post-graduation trajectories of international doctoral graduates in Japan(2025~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- This study investigates how Japan's doctoral education shapes international graduates' career trajectories to inform policies enhancing Japan's appeal as a global talent hub. It aims to constructs a dataset analyzing post-raduation outcomes, including geographic/industry distribution, and career achievements. It evaluates the cross-cultural value of Japanese PhDs across regions/industries and compares challenges faced by international vs. Japanese graduates in job market. By expanding focus to diverse demographics and non-academic sectors, the research identifies systemic barriers and leverages insights for evidence-based strategies to attract/retain global talent, strengthen research competitiveness, and align education outcomes with labor market needs
教員以外
- 劉 玲芳
- 特別研究員奨励費
- 世界の中の近代東アジアの服飾文化――越境する文化の視点から(2025~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- これまでの服装研究は、自国の文化を自国の視点で見る「単眼的」なものが中心であった。しかし、この方法では、近代東アジアにおける服飾文化の変化や活発な交流の動きを十分に捉えきれないという課題がある。本研究では、民俗学・歴史・美術・ファッションなど多様な分野の資料を用い、多言語・多視点から近代東アジアの服飾文化を総合的に分析する。とくに、国境を越えた文化の動きや、グローバルな視点を重視することで、東アジアと欧米を横断する新しい服飾文化研究を目指している。服装という切り口から、近代東アジアの文化と歴史の新たな姿を明らかにし、これまでにない服飾文化史を構築することを目的としている。
- 伊藤 涼
- 若手研究
- 「魏晋玄学」の思想構造の研究(2025~2029年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、中国魏晋期に流行した「玄学」が、老荘思想に基づく形而上学的理論を取り込むことで儒教思想を再構成しようとする試みであったことを明らかにするものである。何晏・王弼・郭象・張湛の思想を個別に分析し、それらに共通する思想構造を明らかにすることで、「玄学」を従来の解釈から脱却させ、儒教思想史の中に再定位することを目指す。
- 伊藤 涼
- 特別研究員奨励費
- 魏晋玄学の研究(2025~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、魏晋期に活躍した何晏・王弼・郭象の思想を分析し、「玄学」の思想史的展開を明らかにすることを目的とする。従来の研究では、「玄学」に西洋哲学的理論を重ねる解釈が多く、また儒教思想との関係性も十分に論じられてこなかった。本研究では、人間観・世界観・政治思想に注目しつつ、各思想家の理論とその変容を社会状況との関係の中で検討し、「玄学」が儒教思想のもとに形成・展開された過程を思想史的に解明する。
- HOMAYUN Shamim
- 特別研究員奨励費 外国人特別研究員
- バーミヤン社会文化史(1504~1964):磨崖仏が見下ろす地にて(2025~2027年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、バーミヤン河谷(アフガニスタン中央部)のモンゴル侵攻以降の歴史を、16世紀以降の展開に力点を置いて解明する。磨崖仏で著名なバーミヤンであるが、現在の地域社会のあり様に直接接続するこの時期の歴史はほぼ未解明である。本研究は、新出の歴史史料群に住民の過去語りを組み合わせ、それを一挙に明らかにする。
本研究の意義は、当該時期のバーミヤンの通史を記述することにのみあるのではない。より重要なのは、現在のバーミヤンに見られる民族構成や宗派的布置を移住や交易といった観点から解明することである。本研究は、バーミヤン史の空白を埋めるだけでなく、移動の歴史学、アイデンティティの歴史学の作品としても大きな意義を持つ。