外部資金による研究
文部科学省・日本学術振興会科学研究費による研究調査
当研究所の教員が研究代表者を務める文部科学省・日本学術振興会科学研究費研究課題の一覧です。
- 青山 和佳
- 基盤研究(B)
- 人間回復と地域社会再生のための有機農業:国際比較研究 (2021~2024年度)
- 研究分担者
- 受田宏之, 中西徹, 清水展
- 研究の目的
- 本研究では、有機農業が、発展途上国の低所得層の生存戦略として社会的意義を有するのみならず、文化的側面においても大きな価値を有し、人間回復と地域社会の再生に寄与することを、比較分析を通じてあきらかにする。大正として、歴史的にアメリカとの密接な関係(隣国、植民地、占領支配)をとおしてグローバル化の影響を直接に受けてきた国である、フィリピン、日本およびメキシコを取り上げる。それらの3国で小地域社会における社会関係を基礎とする「提携」と「参加型有機認証制度」という二つのシステムの展開に着目し、未来への可能性を実証的に探る。
- 中島 隆博
- 基盤研究 (B)
- 「一般リズム学」を地平とする統合的思想史の構築 (2022~2025年度)
- 研究分担者
- 沖本 幸子, 田中 純, 竹峰 義和, 朝倉 友海, 乗松 亨平, 長木 誠司, 中井 悠, 加治屋 健司, 森元 庸介, カペル マチュー, 桑田 光平, 星野 太
- 研究の目的
- リズムの概念を音楽学、あるいはダンスを中心とするパフォーマンス研究に限定することなく、語源となるギリシア語「リュトモス(rhythmos)」の多義性を意識しながら、バンヴェニストによる言語学的研究、メショニックによる文学的研究、マルディネによる哲学的研究などの理論的成果を踏まえ、時間と空間、言葉とイメージ、生物と無生物といった多領域にまたがる広汎な領域を貫く〈分節化の原理〉として再定義しつつ、欧米圏のみならず日本を含めた東アジア圏を視野に収め、1) 絵画、写真、映画などの造形・映像領域、ならびに文学を含めた一般芸術学の構築、2) とりわけ習慣や秩序をインターフェイスとした個と共同体の相互作用的な編成メカニズムの解明を主たる柱としつつ、思想史・文化史の刷新に寄与しうる視座の獲得を目的とする。
- 桝屋 友子
- 基盤研究 (B)
- 大原美術館フーケ・コレクション調査に基づくイスラーム期のエジプト陶器通史の構築 (2022~2024年度)
- 研究分担者
- 菊池 百里子, 神田 惟
- 研究の目的
- エジプトはイスラーム時代の陶器生産の重要な中心地であり、上質の彩画をもつラスター彩陶器の生産やイスラーム陶器に大変革をもたらしたフリット胎土の発明などで知られる。現在に至るまでエジプト陶器史の研究は専ら現カイロ市南部のフスタート地域から出土した陶片の研究に依拠しており、多くが小片であるが故に彩画や銘文の分析など美術史学的研究には限りがあった。ところが岡山県倉敷市の大原美術館の所蔵するフーケ・コレクションは、19世紀末にフランス人医師フーケがフスタートで採集した陶片約400点を含み、ごく初期の採集であるため、大型陶片が多く、状態も良好であり、美術史資料としての研究が可能である。これらの陶片を地域、時代、技法、モチーフに基づいて詳しく分類・分析・考察することによって、これまでなされてこなかったエジプトにおけるイスラーム陶器通史の構築を美術史の立場から提示し、国際的な学術貢献を果たす。
- 藏本 龍介
- 基盤研究(B)
- 聖典宗教の人類学:教義のエージェンシーに注目して (2022~2025年度)
- 研究分担者
- 高野 さやか, 岡部 真由美, 中尾 世治, 石森 大知, 門田 岳久, 金子 亜美
- 研究の目的
- 本研究では、「(聖典)宗教」を「社会」の想像/創造を可能にする「教義」、「社会」を「教義」の探究を通じて結びついたヒト・モノのネットワークと定義する。こうした方法論的視点から本研究では、仏教、キリスト教、イスラム教および「聖典化」した民間伝承を事例として、「宗教」と「社会」の相互構成的プロセスを、現地調査を通じて民族誌的・歴史的に明らかにする。同時に、その成果を相互に比較検討することによって、「聖典」をもつということがこのプロセスをどのように特徴づけているかという問題について、より一般的な答えを提示する。こうした作業を通じて、仏教・キリスト教・イスラム教に関する学術的研究だけでなく、人類学・宗教学一般に対する理論的貢献を目指す。
- 菅 豊
- 基盤研究 (B)
- ヴァナキュラー概念を用いた文化研究の視座の構築―民俗学的転回のために― (2022~2024年度)
- 研究分担者
- 西村 明, 塚原 伸治, 川田 牧人, 宮内 泰介, 俵木 悟, 加藤 幸治, 島村 恭則, 河野 正治, 松岡 薫
- 研究の目的
- 現在、民俗学は、歴史性、継承性のある「伝統」文化を解釈するだけではなく、日常生活に立ち現れる同時代的な文化の諸現象をも含んで考究する視角を獲得した。その視角を支える重要概念が「ヴァナキュラー(vernacular)」である。ヴァナキュラー文化には、無名の人びとが生きるなかで周りにあるものを巧く「使い回し」、「なんとかやっていく」生活の技芸と知識、創造力、そして情意が埋め込まれている。本研究は、これまでの日本の民俗学が十分に取り組んでこなかったヴァナキュラー文化の事例研究を蓄積し、そのなかから普通の人びとの「生」と結びついた日常の創造的生活戦術を読み解くことを第一の目的とする。さらに、その研究方法や理論を検討することによって、日本の民俗学においてヴァナキュラー文化研究の視座を構築し、民俗学の研究領域を拡大することを第二の目的とする。
- 森本 一夫
- 基盤研究(B)
- 「スンナ派」と「シーア派」:自己意識と相互認識のイスラーム史研究にむけて(2023~2026年度)
- 研究分担者
- 新井和広,河原弥生,二宮文子,森山央朗
- 研究の目的
- 本研究は、イスラーム史上のさまざまな場に現れ「スンナ派」「シーア派」と名乗った/他から呼ばれたさまざまな集団や個人のより適切な理解、同じくしばしば見られる「両宗派混淆」とされる状況のより正確な解釈を目指し、さまざまな時代や地域に生きた人々の「スンナ派」あるいは「シーア派」としての自己意識と相互認識を研究する。これは、「スンナ派」「シーア派」という呼び名が惹起する画一的な性格づけ(教義や実践に関する「教科書的な知識」による)の弊害を逃れ、重要な変化の時代に現れることが多かったそのような集団・個人・状況をより良く理解しようとする試みである。
- 佐橋 亮
- 基盤研究(B)
- 東アジア国際秩序の歴史的形成過程:非西洋国際関係論と地域研究の接合(2024~2026年度)
- 研究分担者
- 向山 直佑, 高橋 慶吉,青野 利彦,佐竹 知彦,タンシンマンコン パッタジット,ロート アントワン,クーン フェリックス
- 研究の目的
- 本研究の目的は、東アジアにおける国際秩序の歴史的形成過程を、近代以前までを分析対象に含め、従来よりも長いタイムスパンを取って分析することで明らかにし、そこから今後の地域秩序に関する示唆を見出すことである。
- 馬場 紀寿
- 基盤研究(C)
- パーリ語世界の形成にかんする思想史的研究(2020~2024年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、「パーリ語世界がどのように生まれたのか」を考察するに当たり、パーリ語世界の成立の起点となったスリランカで最初に編纂・制作されたパーリ語文献に焦点を当て、その成立状況と思想内容を解明する。スリランカのパーリ文献を、インド本土で成立した仏教文献と比較することによって、パーリ文献に独自の思想の成立状況を調査する。さらに、これらパーリ文献の分析を通して東南アジア大陸部に影響を与えた思想が如何にして成立したのかを分析する。この二段階の作業を経て、パーリ語世界を形成した基本的思想がどのように生まれ、東南アジアに広まったのかを明らかにしたい。最終的には、サンスクリット語世界が始まった4、5世紀に、スリランカのパーリ語文献が独自に生み出し、後の東南アジア大陸部に影響を与え、パーリ語世界の礎となった諸思想を解明する。
- 柳 幹康
- 基盤研究(C)
- 『宗鏡録』の一心思想の研究 (2021~2025年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は東アジア仏教全体を展望する巨視的な視座の確立を目指し、『宗鏡録』が中国仏教独自の禅の立場からインド由来の仏教思想をいかに捉えなおしたのかを文献学的に解明する。
『宗鏡録』は禅宗所伝の一心(本来仏である己の心)を明かすために仏典から要文を網羅的に蒐集し、100巻にまとめた書物である。そこでは禅の立場から従来の教・律・浄土など仏教の諸要素が一心看取のための手段として読み替えられている。『宗鏡録』は従来の多元的な仏教を禅の一心を核に一元的に再編するものであり、その後中国のみならず朝鮮・日本を含む東アジア一帯の仏教に多大な影響を及ぼした。
本研究では『宗鏡録』と関連文献を比較分析することで、一心に関する諸説が従来の仏教においてどう形成され、それを『宗鏡録』がいかに摂取したのか、ならびに『宗鏡録』が一心に基づき従来の仏教を具体的にどう再解釈したのかを明らかにする。
- 塚本 麿充
- 基盤研究 (C)
- 日本・アジア美術史のオーラルヒストリー・アーカイヴの構築と公開 (2022~2024年度)
- 研究分担者
- 板倉 聖哲, 高岸 輝, 増記 隆介
- 研究の目的
- 本研究は日本・東洋美術史学のオーラル・アーカイヴの構築、および公開を目指す。日本の1930-40年代生まれの美術史家、修理関係者および美術関係者を中心に、各地の協力者に依頼し、共同して聞き取り調査(グループ・インタビュー)を行い、報告書およびweb上で公開する。同時に海外(アメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾、韓国)の関係者にも調査を行う。従来までは残らなかった作品に関する総合的な情報を後世に伝えるまた本調査終了後も、引き続き1950年代以降について、継続的調査・公開をすすめていく。 また従来まで蓄積されてきた近代の美術史学研究に非常に欠落している部分として、特に戦後に盛んになったアメリカ・ヨーロッパ・中国・韓国・台湾をふくむグローバルな美術史学の交流、および展開のなかでの位置付け行うことにより、日本、東アジア地域、欧米各地における美術史学研究の成立および相互理解の具体的な過程を明らかにする。
- 小寺 敦
- 基盤研究 (C)
- 先秦時代における政治思想の形成と展開-清華簡墓主個人の精神的内面の視角から- (2022~2024年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 清華簡という同一墓葬から出土したことが確実である清華簡の政治思想関連文献を緻密に検討することにより、当時の墓主の政治思想を復元し、当時の楚地域における一個人の政治的な思想体系を知ることができる。また研究を進めるにあたって、清華簡という単一の資料群内の文献を相互に参照することにより、出土資料の解釈が伝世文献の内容に誘導されることが起こりにくくなる。以上により本研究を進めることによって、当時の人々の政治思想のみならず、精神世界のあり方を具体的に知る手掛かりになる。それから清華簡が楚地域の墓葬であり、清華簡に中原地域である三晋地域由来の要素が見られるから、楚地域における精神世界、そして楚地域と中原地域との思想的・文化的な関係性を理解する契機にもなり得る。この従来不可能であった先秦時代における特定個人の精神世界を復元することが、ひいては中国史の諸事象に対する見直しに繋がることになるであろう。
- 小川 道大
- 基盤研究 (C)
- 植民地化によるインド西部の農村社会の変容:前植民地期からの連続的考察 (2022~2025年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は植民地化によるインド農村の社会経済的な変容を、植民地下の新地税制度に注目し、前植民地期に遡って考察する。そのために本研究は前植民地期の史料が多く残るインド西部を対象とし、前植民地期と植民地の税関係の史料を比較・結合することで、植民地化による変化を連続的に考察する。具体的には、①前植民地期の郡および村落の税記録、②前植民地期の通関税および交易記録、③植民地期の当該記録を用いてこれらの史資料群の比較・結合を行う。
- 名和 克朗
- 基盤研究 (C)
- ネパール、ドラカ郡における震災後の居住実践の中期的変遷に関する映像人類学的研究 (2023~2025年度)
- 研究分担者
- KHAREL DIPESH
- 研究の目的
- 本研究は、ネパール、ドラカ郡アランプ村の事例を通して、耐震性の観点から建物 の設計や工法に多くの規制がかかった2015年大震災後のネパールにおいて、人々が、耐震 性は高いがより狭く、機能的にも美的にも問題が指摘されることの多い耐震住宅を、いか に受け入れ、 そこでいかなる居住実践を行ってきたかを、震災以前からの居住環境の中期 的変遷を踏まえて明らかにする研究である。技法的には、通常の民族誌的フィールドワー クに加えて映像人類学的手法を用いる。震災後ネパールに関する既存の人類学的・民族誌 的研究に対する独自の貢献に加え、T.インゴルドの「建てる」と「棲まう」の概念を暫定 的に用いて現状の複雑さを理論的に示すこと、また、より実践に近い課題として、耐震住 宅を人々が受け入れていく条件の一例を提示することもまた、目指されている。
- 佐藤 仁
- 基盤研究 (C)
- 世界から見た日本の開発学:その体系化と教材化 (2024~2026年度)
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、日本の開発経験を基盤に新たな体系を構築し、教科書としてまとめること を目的とする。貧困削減や気候変動への適応といった具 体的な課題は、その成果に注目が 集まるために、どのような「プロセス」から成果が導かれたのかという点が看過されがち である。応募者は、 地域に固有の開発概念を含む文化や価値観が、このプロセスを大きく 左右すると考える。つまり、同じ投入(技術や資金)であっても、成果ま での回路が地域の 文脈によって異なる可能性があり、この回路の選び方によって、格差や不平等、開発の副作用 など、プロセスに伴う新たな課 題を抑制できる見通しが立つのではないかと考えている。
- 渡邉 祥子
- 基盤研究 (C)
- イスラーム教育の社会的機能に関する国際共同研究:後期植民地期アルジェリアの事例 (2024~2027年度)
- 研究の目的
- パットナムやブルデューらによって提唱された社会関係資本(文化資本)論におい ては近年、ジェンダーやエスニシティによる資本の種類の相 違について様々な指摘がなさ れてきた。例えば、支配的な文化資本とコミュニティ・ベースの文化資本とを区別する議 論や、移民の出身文化と 移民先の支配文化との関係論が、先進国の事例を基に展開されて きた。また、ジェンダーによる社会関係資本の質の差異については、男性より も女性の方 がインフォーマルな社会的なネットワークとケア領域における活動に依拠しやすい点も指 摘されている。本研究は、植民地期アルジ ェリアでアラビア語教育を行った私立学校 (自由マドラサ)の経済的基盤に関する実証的分析を進めるとともに、こうした社会学の 知見を取り 入れ、イスラーム地域におけるマドラサやコーラン学校の多様な社会的役割と レジリエンスに関するイスラーム地域研究・人類学研究の議論に 貢献することを目的とする。
- キム ジユン
- 研究活動スタート支援
- 1980年代韓国における「Foreignness」(「外」)についての言説・表象研究
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本研究は、「Foreign」といった概念には「内」対「外」、「Us」対「Them」の構造に基づいて造られた境界感覚が反映されているとの考えから、「foreign(外)」が含む意味の多層性を究明する。本研究は1980年代韓国に焦点を当て、「ローカル」なりの外部との関係認識、境界づくりの過程を「foreignness」の具体的意味や詳細を分析し明らかにする。「外」の表現そのものが持つ複雑性と多面性に着目し、その意味構造を究明しながらそこに絡む社会文化や局面の特徴を解明することを目的とする。1980年代韓国はグローバル・モビリティやメディア環境など、「外」を媒介するあらゆる条件が大きく変遷した局面(conjuncture)として取り上げられるが、他の時期や社会の文脈についても比較的視座から考えることができる。
- 上田 遥
- 若手研究
- 多大な資源制約下における食生活実態の解明、食支援施策と基礎理論の体系化
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 現代日本における貧困世帯の食生活の実態解明をねらう実証研究は少数であり、効果的な食支援施策立案のための方法論や基礎理論もまだ確立されていない。本研究では(1)多大な資源制約下にある貧困世帯について、食の社会学と倫理学を基礎に開発した調査手法によってその食生活実態を解明し、(2)そこで得られたエビデンスを基礎に、食支援施策および「食の貧困」をめぐる基礎理論(社会学、倫理学、経済学)の体系化を試みる。
- タンシンマンコン
パッタジット
- 研究成果公開促進費(学術図書)
- タイ外交史を読み直すーー「竹の外交論」からの脱却
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本書の刊行目的は「竹の外交論」(英:Bamboo Diplomacy)という従来のタイの外交言説において主流であり続けてきた 考え方を再検討し、タイの歴史に関心を持つ読者に新たな歴史観を示すことである。本書の出版は、具体的には次の3つ の意義をもつ。学術的には、本書はタイ日英中4カ国語の資料を独自の着眼点と手法を通して分析することで、東南アジ ア研究に先駆的な視点を提供し、国際関係論の理論的深化に貢献する。また、本書は激化する社会対立を和解へ導く際、 歴史学の貢献とは何かを起点に、現代の状況に対する社会的意義を与えると考える。最後に、タイの外交の論理を、日本 の読者がタイ出身の研究者の著作によって理解を深めること自体が、一つの重要な国際交流となる。本書は日本の読者の 国際理解を促進する一助を担いつつ、日本の学界と言論界のダイバーシティの推進に貢献する著作となりうる。
- 上田 遥
- 研究成果公開促進費(学術図書)
- 食の豊かさ 食の貧困――近現代日本における規範と実態――
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 本書の目的は、現代日本における「食の豊かさ」と「食の貧困」とは何かを明らかにすることである。 「食の豊かさ」と「食の貧困」をめぐる問題の複雑さに由来する、さまざまな課題に取り組むべく、本書では、「食の豊 かさ」と「食の貧困」についての有効な分析手法を、食の倫理学と社会学の理論に基づいて開発・提案し、この手法に基 づいて「食の豊かさ」「食の貧困」を解明した。また、本書では、歴史学・農業経済学・栄養学の先行研究を基礎としな がらも、「食の再帰的近代(reflexive food modernity)」という社会学的概念を導入し、近現代日本の食生活規範・実 態の変遷を一体的に捉え直す、新しい食生活史観を提示した。
教員以外
- 鈴木 真吾
- 研究成果公開促進費(学術図書)
- 近代オスマン帝国における国家医療の誕生―港湾都市イズミルの衛生と感染症
- 研究分担者
- なし
- 研究の目的
- 補助事業の目的は、学術書『近代オスマン帝国における国家医療の誕生―港湾都市イズミルの衛生と感染症』の出版である。本書は、近代オスマン帝国における国家的な 医療・衛生制度、すなわち「国家医療」の誕生と地方への普及過程を明らかにし、現代 社会に連続する国家と国民の健康の関わりについて、近代オスマン帝国史の視座から新た な知見を提供することを目的としている。本書は、近代オスマン帝国における国家的な 医療・衛生制度の普及過程を明らかにした初めての試みであり、オスマン帝国の経験は、 日本を含めた近代アジア地域における医療・衛生体制の整備という歴史展開の一部に位置 づけられる。オスマン帝国の視点から新たな知見を加えることで、関連諸分野の発展に少 なくない貢献を果たすことが期待される。
その他の研究助成・奨学金