主任:森本一夫
ペルシア語はかつてユーラシアの広大な領域で用いられていた。これに基づき、一つの分析概念として、ペルシア語の継続的な使用という共通の体験を共有する「ペルシア語文化圏」を設定することが可能となる。しかし、「ペルシア語文化圏」には「ペルシアの高度な文化が及んだ世界」という側面があることから、この概念をめぐる議論には、ペルシア中心主義とでも呼ぶべき視点が紛れ込むことが多い。本研究は、あくまで言語としてのペルシア語に注目し、様々な出自・背景を持つ人々がそれとどのように関わったかを実証的に研究する。「ペルシア語文化圏」という分析概念を用いることによって、過去・現在の双方における人々の交流の諸相を新たな視点から明らかにし、現代に生きる人々の世界認識や自他意識の革新に貢献したい。なお、当面は、関連の研究者の招へいと研究セミナーの開催を随時行い、共通認識を深めながら、各個に研究を進める予定である。
大 塚 修 ペルシア語文化圏における歴史記述の展開
熊 倉 和歌子 簿記術から見たペルシア語文化圏
橋 爪 烈 医学、本草学文献に見るペルシア語文化圏
近 藤 信 彰 詩人伝から見るペルシア語文化圏
菅 原 睦 テュルク系諸文章語とペルシア語との相互関係
森 本 一 夫 ペルシア語文化圏におけるアラビア語使用
山 岸 智 子 シーア派ネットワークとペルシア語文化
中 西 竜 也 中国のムスリム社会におけるペルシア語文化
二 宮 文 子 南アジアのスーフィズムとペルシア語文化
真 下 裕 之 南アジアにおけるペルシア語文化
前 田 弘 毅 コーカサスにおけるペルシア語文化
山 口 昭 彦 アナトリアにおけるペルシア語文化
小 倉 智 史 サンスクリット文化圏との対比
森 山 央 朗 アラビア語圏との対比
宮 本 亮 一 中期イラン語社会との比較
東文研セミナー「アフタンディル・エルキノフ教授(タシュケント国立東洋学研究所)「ナヴァーイー著『両言語間の裁定』およびチャガタイ・トルコ語とペルシア語との関係」(8 July, 2014)
東文研セミナー The ”King of Islam”: An Idea and Its Typological Significance (16 July, 2014)