白山信仰や時衆、真言宗など多様な信仰と宗派が密集し競合した越前・若狭・加賀。 この北陸地域の仏教寺院を通して、中世の地方社会の特質を検討。幕府や本寺などの中央権力が 当地の寺院に及ぼした影響を解明する一方、中央の影響を受けず地域が自律性を見せた面にも着目。 中世地域社会論や仏教史研究、国外との比較研究にも新たな視座を提示する。
序章 | 研究史と問題の所在 |
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一 | 日本中世の地方社会の研究視角の軌跡 |
二 | 視角1 越前・若狭・加賀地域 |
三 | 視角2 仏教寺院 |
四 | 本書の課題・視角・構成 |
第一部 | 越前の寺院の存立と中央の動向 |
第一章 | 室町期地方寺院の動向と都鄙諸関係―越前国西福寺を事例に― |
一 | 応永年間における西福寺寺僧の私領寄進と子院(領)の形成 |
二 | 将軍家祈願寺認定における西福寺の動向と浄華院 |
三 | 西福寺における経典(活動)の展開 |
第二章 | 室町期越前国における時衆道場の展開と中央権力 |
一 | 地域における称念寺・光明院の実態 |
二 | 応永年間における光明院倉の管理問題と藤沢・遊行上人 |
三 | 長禄期における諸道場の将軍祈願寺(所)認定とその背景 |
四 | 諸道場の展開と遊行上人 |
第三章 | 権威と競争―中世地方社会の真言宗寺院の場合― |
一 | 越前国における真言宗諸寺院の社会経済的・宗教的環境 |
二 | 十四世紀における聖教の生成と滝谷寺の成立 |
三 | 十五世紀における滝谷寺の門徒寺院 |
四 | 十六世紀における滝谷寺とその門徒寺院の変容 |
五 | 滝谷寺とほかの真言宗寺院の競合 |
六 | 朝倉氏と醍醐寺からの支持と保護 |
第四章 | 中世地方寺院の再生と地域の武家・宗教領主―越前国越知山大谷寺を事例に― |
一 | 大谷氏と千秋氏 |
二 | 大谷寺と寺院構造の変化 |
三 | 大谷寺と平泉寺 |
四 | 寺院構造の再編と延暦寺の末寺化 |
第二部 | 北陸地域の宗教社会構造 |
第一章 | 文安年間の東寺修造勧進と越前国の諸寺院―一五世紀越前国の宗教状況を考えるため― |
一 | 勧進指南の要請される背景―中世豊原寺の宗教的性格― |
二 | 東寺の勧進への奉加からみた諸寺院の相互関係 |
三 | 奉加しなかった寺院 |
第二章 | 中世から近世初頭における本末関係の変容―若狭国顕密寺院の天台・真言― |
一 | 中世明通寺の天台と真言 |
二 | 中世羽賀寺の天台と真言 |
三 | 中近世移行期における若狭の真言勢力秩序 |
近世初期明通寺・羽賀寺の末寺化 | |
第三章 | 中世後期越前・加賀国境地域における真言・時衆勢力 |
一 | 越前三国湊の宗教社会構造 |
二 | 越前金津の宗教社会構造 |
三 | 南加賀の真言・時衆勢力と越前 |
終章 | 世界史のなかの日本中世地方社会と地域的宗教秩序―本書のまとめと展望にかえて― |
一 | 本書のまとめ |
二 | 日本中世史研究における本書の位置づけ |
三 | 世界史のなかの日本中世の地方社会―比較史への展望(一)― |
四 | 世界史のなかの地域的宗教秩序研究―比較史への展望(二)― |
初出一覧 | |
あとがき | |
索引 | |
英文要旨 |
黄霄龍 著
『日本中世の地方社会と仏教寺院』
吉川弘文館, 272 ページ, 2024年1月, ISBN: 978-4-642-02982-7