本書は、ロングセラーとなっている現代中国学の教科書『5分野から読み解く現代中国―歴史・政治・経済・社会・外交』の2回目の改訂版(新版)です。急速な変化を続ける今日の中国を、歴史、政治、経済、社会、外交の5分野から読み解く、総合的なアプローチを取っています。
第1部「歴史―国家統一と大国化への道程」は、帝国主義と近代化への対応に失敗した清朝を倒して成立した中華民国、そして日中戦争に勝利した中華民国を倒して成立した中華人民共和国の歴史を縦観する通史です。近現代中国の歴史が、国家建設の担い手は変わりつつも、一貫して国家の統一と大国化を追求する歩みであったことを明らかにしています。
第2部「政治―一党支配の継続、変容の可能性」は、日本ではなじみの薄い中国の政治体制、政治改革の方向性、そして多民族国家・分裂国家としての特徴を明らかにしています。「議行合一制」と呼ばれる中国の政治体制は、自由民主主義や地方自治を原理的に否定し、実際には中国共産党による一党支配を正当化する体制です。この政治体制に今どのような問題が発生しているのか、将来政治改革が可能なのかを検討するとともに、中央・地方問題、少数民族問題、香港問題、台湾問題など国家統合をめぐって噴出する深刻な矛盾を描き出しています。
第3部「経済―急速な成長、拡大する格差」は、目覚ましい勢いで成長を遂げた中国経済の 成功の秘訣を明らかにしています。中国経済はこれまで、労働人口の増加に加えて、外資導入により、資本ストックと技術導入の面で優位に立って来ました。今や「経済大国」となった中国は、労働人口減少、過剰投資による負債増大、イノベーションといった課題に直面しています。グローバル化し、世界経済と一体化した中国経済の「新常態」とは何か、今後の方向性は何かが指摘されています。
第4部「社会―混沌に生きる人々、多元化する価値」は、高度成長の影で急速に変貌する社会の構造と、深刻化する環境問題及び社会問題について、中国政府がどのような対策をとってきたのかを明らかにしています。現在の中国政府の対応は、上からの法制化や厳罰化の推進ですが、先進国の過去の経験からもわかるように、社会問題の解決や改善には、いずれ社会システムそのものの変革が必要となることが指摘されています。
第5部「外交―加速する大国化、危機をはらむ日中関係」は、かつて少数のエリート・指導者の独占物であった外交政策が、経済発展や国際的地位の向上につれて、国内のナショナリズムや大国意識に強い影響を受け始めていることを明らかにしています。特に日中関係は、経済的・人的交流や相互依存が増大する一方で、政治面や安全保障面で矛盾が激化していることが指摘されています。
中国は、多くの顔を持つ複雑な大国です。国際社会のなかでますます重要性を増していく中国の今後の行方を見据えるために、「食わず嫌い」ではなく、是非本書を手に取って読み、実際に中国に行って等身大の中国を見て欲しいというのが、著者一同の願いです。
目次 | |
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第1部 歴史―国家統一と大国化への道程 | |
第1章 中華民国史 | |
第2章 中華人民共和国史 | |
第2部 政治― 一党支配の継続、変容の可能性 | |
第3章 政治体制 | |
第4章 政府主導の政治改革と民主化への展望 | |
第5章 国家統合 | |
第3部 経済―急速な成長、拡大する格差 | |
第6章 中国の経済成長 | |
第7章 経済のグローバル化 | |
第4部 社会―混沌に生きる人々、多元化する価値 | |
第8章 社会の構造と変容 | |
第9章 環境問題 | |
第10章 社会問題と政策 | |
第5部 外交―加速する大国化、危機をはらむ日中関係 | |
第11章 冷戦期における中国の外交・国防戦略 | |
第12章 冷戦終結後の中国外交 | |
第13章 中国の対日外交と日中関係 | |
「新版」へのあとがき | |
引用・参考文献 | |
人名索引 | |
事項索引 |