2012年に中国において最も生産規模の大きい農作物がコメからトウモロコシに変わった。同年のトウモロコシ生産量は2億561万トンに達した。
なぜトウモロコシが、主食としてより重要なコメや小麦を抑え、第1位の生産規模を持つ農産物になれたのだろうか。
小規模農家が食糧生産を支える中国において、膨大な数量のトウモロコシはどのように生産、流通、利用されているだろうか。
そしてトウモロコシに関わる活動は往々にして発展が比較的遅れている食糧主産地の経済にどのような影響を与えているだろうか。
これらの疑問点を解明するために、本書は東北地域に位置する吉林省の事例を中心として、1990年代後半以降のトウモロコシ産業の発展メカニズムと地域経済の関係について検討する。
食糧経済に関する研究は、食糧の需給情勢を数量ベースで示すだけではなく、食糧を商品として扱うアクターたちの行動とそれによって形成する産業の動向により注目すべきである。
本書はこのような考えに基づいた経済学的研究の成果である。
序章 | トウモロコシ産業と中国の農業・農村問題 |
第1章 | 中央政府と省政府によるトウモロコシ政策の変遷 |
第2章 | トウモロコシ加工企業の発展 |
第3章 | トウモロコシ農家の経営状況 |
第4章 | トウモロコシ流通企業と「経紀人」 |
第5章 | トウモロコシ産業の部門間関係 |
終章 | 結論と今後の課題 |
補論 | トウモロコシ貿易部門の変化 |
張 馨元
著
『中国トウモロコシ産業の展開過程』
勁草書房, 208ページ
2014年3月