西アジア研究部門森本研究室を拠点とする研究プロジェクト「ムハンマド一族をめぐる諸言説に関する研究」(代表:森本一夫;班研究ならびに科研費基盤研究Bによるプロジェクト)では、2021年9月18日(土)に「東文研シンポジウム ムハンマドの血筋とムスリム:預言者一族をめぐる多様な語りと語り手たち」(オンライン)を開催しました。シンポジウムでは、宗教的・政治的・社会的文脈を異にするムスリムによって「預言者一族」がどのように論じられてきたのかが、多様な地域と時代に取材した10本の事例研究を通じて検討されました。一様に敬意の対象とされることになっている集団の中に否応なく現れる「尊敬に値しない」個人の問題、母方を通じた血統の問題など、様々な「場」で共通して議論の対象となっていた論点についての理解を深めることができたことなど、今後の研究に資するところの多いシンポジウムとなりました。
発表者に加えてシンポジウムにご参加下さった50名ほどの方々、また開催に当たって協賛していただいた科研費基盤研究A「イスラームおよびキリスト教の聖者・聖遺物崇敬の人類学的研究」(代表:赤堀雅幸)およびJapan Office, the Association for the Study of Persianate Societiesにお礼申し上げます。(文責:森本)
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趣旨説明
パネル Ⅰ「ムハンマド一族論三態:インドネシア、イラン、中国より」
新井和広(慶應義塾大学商学部教授)「現代インドネシアにおける「お家の人々」の美徳:アブドゥッラー・ビン・ヌーフほかの議論から」
森本一夫(東京大学東洋文化研究所教授)「現代イランのある大衆向けサイイド論:バーゲリヤーン・モヴァッヘド著『セイイェドたちの奇蹟』をめぐって」
中西竜也(京都大学人文科学研究所准教授)「生まれながらにして神霊:聖裔を超えたサイイド・アジャッル」
パネル II「ムハンマド一族と女性・ムハンマド一族の女性」
河原弥生(東京大学附属図書館准教授)「中央アジアの女系サイイドに関する系譜書」
白谷望(愛知県立大学外国語学部准教授)「現代モロッコにおける女性王族の政治的役割」
パネル III「イスラーム初期史解釈との相関」
森山央朗(同志社大学神学部教授)「シャーフィイー派「ハディースの徒」にとってのアリー(家)」
二宮文子(青山学院大学文学部教授)「15世紀北インドにおける呪詛をめぐる議論:ダウラターバーディー作『サイイドたちの美徳』より」
パネルIV「十二イマームの位置づけ」
吉田京子(神田外国語大学グローバル・リベラルアーツ学部准教授)「12イマーム・シーア派のイマーム論における「サイイド」像:アブドゥル・アズィーム・ハサニーの事例を中心に」
杉山隆一(東京大学東洋文化研究所特任研究員)「サファヴィー朝最末期におけるイマーム・レザーの奇蹟譚をめぐって」
水上遼(東京大学東洋文化研究所特任研究員)「スンナ派の十二イマーム崇敬とマフディー」
総合討論
担当:森本