本研究会は、イスラーム・ジェンダー学科研(イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究、代表:東京大学 長澤榮治)の公募研究会の一つである。その目的は、中東・イスラーム地域で広く用いられる「家族」「親族」概念について、地域や時代、文脈や専門分野による多様性を認めつつ、これらの概念が個々の状況においてどのように用いられているのか、これら概念によって表現されるような人間の集団や結びつきは一体どのようなものなのかを考察することである。
初回集会では、研究会の呼びかけ人である竹村が研究会全体の目的を述べ、今後の議論の一例として、竹村が個人的に関心を持つ「家族」「親族」概念の定義や用法について、日本語・英語・アラビア語の代表的な辞書から定義を示し、エジプト社会に関わる研究書から個々の研究者が想定する「家族」「親族」概念の例を提示した。
議論では、現代エジプトで「核家族」の意味で用いられることが多いアラビア語のウスラ(usra)が近代以降の新しい用語法である可能性が示唆された。また、イランやトルコでは同様の語彙が用いられつつ、それぞれエジプトとは異なった内容や範囲を持つこと、背景にある社会的議論が異なることが指摘された。さらに、中東の人たちがどのような家族観を持っているのか、イスラーム学における「家族」概念はどのようなものか、女性やLGBTに関わる「家族」概念を考察する必要性など、さまざま視点からの発言がなされ、今後の議論の広がりが予期された。
(報告:竹村和朗)
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日時:2017年3月31日(金)16時〜18時
場所:東京大学東洋文化研究所3階 大会議室
発表:「趣旨説明」(竹村和朗 東京外国語大学)
概要:
IG科研の公募研究会の一つ、「イスラーム・中東における家族・親族」の第1回として、提案者の竹村が趣旨説明をします。
本研究会の題名に掲げられた「家族」や「親族」は、中東・イスラーム地域において広く用いられる言葉ですが、時代や地域、文脈、専門等によって語彙や用法、指示対象、想像されるイメージが少しずつ異なるようです。提案者自身は現代エジプトの社会や法の中に現れる「家族」や「親族」の範囲や変化に関心がありますが、他の参加者の皆さんには、それぞれの専門にもとづく別の理解、別のイメージがあると思います。そうしたものをお互いに開示しあい、多様性を確認しつつ、議論の土台を作り上げていければと考えています。
一応、イスラームや中東を共通項として挙げていますが、これらに限定することなく、専門や地域を超えた集まりになるよう、「家族」や「親族」に何か関心がある方々はお気軽にご参加ください。
お問い合わせ:「イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究」事務局
islam_gender[_at_]ioc.u-tokyo.ac.jp
担当:長澤