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東文研セミナー:『法華経』の物語を文学的な仏教実践として再解釈する ―  特に仏塔をめぐる問題に焦点を当てて

日時:2024年12月2日(月)   15:00-16:30

会場:東京大学東洋文化研究所3階第1会議室

講師:阿部龍一 (ハーヴァード大学東アジア言語文化学部教授)

題目:『法華経』の物語を文学的な仏教実践として再解釈する ―  特に仏塔をめぐる問題に焦点を当てて

発表要旨:
『法華経』テクストが教理的な内容に乏しいこと、反対に文学的表現に富んでいることはよく知られている。経典テクストのほぼ全部が前世因縁譚、授記、神通譚、比喩など、さまざまなエピソードで綴られ、それらエピソードの意図(糸)が結び合って経典テクスト全体を貫く大きな物語のうねりと流れを形成している。また劇中劇を始め読者が物語の中に参加するような文学的工夫が随所に見られる。東アジアの漢文注釈書による伝統的解釈(特に科分の解釈法)では、教理の言説が文学的表現より重視される。またその視点から経テクストの各章が独立したものとして扱われ、さらに章内の各節も特定の教理概念に合わせてバラバラに細分化されてしまうので、物語の大きな流れや文学的な工夫が見えなくなってしまう。本発表では伝統的な東アジアの注釈類から一旦離れて、『法華経』の大きな物語がどのように構成され、それが読者に何を促すのかを探る。そのために経典が形成された当時のインドで最盛期を迎えていた仏塔崇拝と深く関わる第十章(「法師品」)と第十一章(「見塔品」)を一つの連続した物語の発展として読み解く。両章の物語の連続を把握することで、なぜ経中の釈尊が般若波羅蜜や瞑想の修得を成仏の条件として説かないのか、なぜ第十一章で示される「二佛並座」の場面が東アジア全体で『法華経』を代表する視覚芸術のイメージとなったのか、なぜ観音菩薩が最も信仰される菩薩となったのか、なども理解可能となる。


連絡先:馬場紀寿(東洋文化研究所)norihisa[a]ioc.u-tokyo.ac.jp

 

 



登録種別:研究会関連
登録日時:TueOct2215:33:182024
登録者 :馬場・多田
掲載期間:20241023 - 20241202
当日期間:20241202 - 20241202