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東文研セミナー「マムルーク絨毯に見られるトルコ民族の文化的影響」のご案内

トルコ文化財団イスタンブル局の美術史専門員、奥村純代氏が来日されます。この機会に奥村氏のご著書『The Influence of Turkic Culture on Mamluk Carpets』(イスタンブル、2007年)のテーマについて、お話しくださるようお願いいたしました。日本ではなかなか知る機会の少ないマムルーク朝絨毯に関する貴重なご発表です。どうぞ奮ってご参加ください。

日時:2012年6月5日(火)、15時〜17時
場所:東京大学東洋文化研究所3階、第1会議室
発表者:奥村純代氏(Art Historian, Turkish Cultural Foundation, Istanbul Office)
テーマ:「マムルーク絨毯に見られるトルコ民族の文化的影響」

概要:15世紀、16世紀にエジプトのマムルーク朝時代に織られた絨毯は、独特の色合いや文様、構図を持ち、他の絨毯グループとは類を見ない。その背景には、キプチャク・トルコ民族が築いたマムルーク朝に、モンゴル征服から逃れてシリア、エジプトの地に移住したアジア、モンゴル出身のトルコ系民族の影響が見られる。エジプトに移住したトルコ系民族出身者は、自分たちの絨毯文化をエジプトへ持ち込み、絨毯を織り、使用し続けた。マムルーク絨毯は西欧、特にイタリアで嗜好され、輸出品や贈り物として特注され、重宝された。マムルーク絨毯の中央に見られる八角形文様とその構図は、エジプトのコプト織物、またはコプト建築の影響を受けたと考えられてきたが、歴史的背景から考察した際、トルコ民族がイスラム教改宗以前にアジアで信仰していた仏教やマニ教、シャーマニズムの文化的影響の一つの痕跡であり、元来の意味は全く消滅してしまっているが、一つの型、一つの装飾文様として、エジプト文化独自の文様と共に応用されたと考えられる。トルコ系民族そしてモンゴル人によってもたらされた、マムルーク絨毯に見られる八角形文様は、15世紀以降地中海地域で頻繁に用いられるようになり、アナトリアやスペイン南部でも独自の歴史や文化のアイデンティティを加えて、その土地特有の文様として絨毯に織り込まれ続ける。トルコ系民族がエジプトへもたらした文化的影響は、絨毯のみならず、建築や細密画など、他分野の美術においても見ることができる。


主催:東京大学東洋文化研究所班研究「イスラーム美術の諸相」

お問い合せ先:東京大学東洋文化研究所桝屋研究室 (電話03-5841-5886)



登録種別:研究会関連
登録日時:TueMay1510:39:302012
登録者 :桝屋・秋山・藤岡
掲載期間:20120515 - 20120605
当日期間:20120605 - 20120605