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班研究共催「映画から見る中東社会の変容 ( 『友だちのうちはどこ?』)」が開催されました

2014年 5月21日(水)17時半より、東洋文化研究所3階大会議室にて、中東映画研究会主催、東文研・班研究「中東の社会変容と思想運動」共催による10回目の研究会が実施されました。今回題材として取り上げられた作品は、『友だちのうちはどこ』(1987年イラン/アッバース・キヤーロスタミー監督作品)、コメンテーターとして、鈴木均氏 (アジア経済研究所・上席主任調査研究員)をお迎えしました。参加者は全体で40名を超えました。以下、研究会での様子をご報告します。


 「友達のうちはどこ?」という映画は1986年にイランで上映された。日本で初めて公開されたのは1992年のことである。この映画は子供を主人公とし、ストーリーも比較的に単純であるが、決してわかりやすいものではない。それはキアロスタミ監督が検閲などの様々な事情のため、多くのメタファーを駆使しながらこの映画をつくりあげているからである。この映画のコメンテーターを務めた鈴木均氏(アジア経済研究所)の表現を借りると「友達のうちはどこ?」は「メタファーの塊」であると言える。鈴木氏自身は、この映画のメタファーを紐解くまでに、10年間近く時間が掛ったと言う。
 鈴木氏はこの映画がイラン革命成就から数年しか経ってない時期で、しかもイラン・イラク戦争の最中に作られている作品であるから、やはり革命と戦争という歴史的出来事がこの作品の中のメタファーを理解する鍵となると強調する。
  まず、この映画の代名詞になっていると言える「ジグザグ道」というメタファーである。コメンテーターは、この「ジグザグ道」がイラン革命を隠喩していると言う。そして、この「ジグザグ道」を二度走り昇った主人公のアフマドプール少年は、20世紀において二度も革命を起こしたイラン大衆を象徴しているということになる。その革命で「西洋文化」を推し進め、革命前に権力を独占していた国王のシンボルとは、木造のドアを鉄のドアに造り替えている業者であり、そして唯一、アフマドプール少年の話を聞く「白ひげの老人」が革命で国民を指導したホメイニを象徴しているという。映画の終わりごろに主人公が友達のかわりに宿題をする場面で突然吹く嵐は、戦争の隠喩に使われている。鈴木氏はメタファーの連続をこのように解釈すると漸くこの映画の「辻褄が合う」と言う。
  ただし、キアロスタミは決して「政治的映画」を作ろうとしたわけではない。コメンテーターによると、逆に検閲が厳しい時代では、彼がいくつかの妥協(例えばシーア派の象徴的な人物の写真を使うなど)を重ねながら、「非・政治的」な作品を作り出そうとしたのであるという。
  質疑応答では、参加者から「少年」を主人公とする映画とキアロスタミのスタイルとの関係性、キアロスタミの他の作品でも使われているジグザグ道の意味合い、映画に使われているペルシア語以外の言語、イランの教育現場における教師と学生の関係、この映画において「扉」の持つ意味合い、映画のロケーションとして農村が選ばれた理由等、多岐にわたる事柄に関する質問や意見が出た。(報告:中東映画研究会ケイワン・アブドリ、協力:山崎郁)


班研究共催「映画から見る中東社会の変容 ( 『友だちのうちはどこ?』)」が開催されました


【日時】2014年 5月21日(水) 17:30-

【場所】東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室 ※エレベーターを出て正面の部屋です

【コメンテーター】鈴木均氏 (アジア経済研究所)

【題材】『友だちの家はどこ』
1987年イラン/アッバース・キヤーロスタミー監督作品

【テーマ】「革命」
  「友だちの家はどこ」は1987年に製作された、キヤーロスタミー監督のというよりは革命後のイラン映画の代表作のひとつです。 日本では次作の「そして人生は続く」と一緒に1993年に公開され、評判となりました。私自身この映画を何十回となく観てきましたが、この映画の中で「ジグザグ道」がどのような重要な意味をもっているのか、当初はよく判りませんでした。
 それが漸く判ったと思えるようになったのは実は随分後のことです。ただそれが判ると同時にこの作品が実はメタファーの塊のような 映画であることがどうにも頭から離れなくなってしまい、子供たちの演技に率直に感動することが出来なくなったことも事実です。 今回はこの映画を改めて全編通して鑑賞し、それから私なりのこの作品に対する「読み」をご披露することで「友だちの家はどこ」の 謎解きを楽しんでいただこうと思います。(鈴木氏より)

担当:長澤



登録種別:研究活動記録
登録日時:TueJun316:51:012014
登録者 :後藤・藤岡
掲載期間:20140521 - 20140821
当日期間:20140521 - 20140521