2026年6月18日(木)14時より、川村悠人准教授による「詩の文法、文法の詩――南アジア古典美学の研究動向と新基軸――」が開催された。
本発表では、南アジア古典文化研究における三つの柱として、サンスクリット文法学、詩学、および両者の相互関係に焦点が当てられた。まず、紀元前5世紀頃に成立したパーニニ文法学の体系とその後の発展について説明がなされ、サンスクリット語が文法学によって規定される言語として理解されてきたことや、近年の研究動向が紹介された。
続いて、南アジアの詩論と文学伝統について概観し、従来は別個に研究されることが多かった文法学と詩学を統合的に捉える視点の重要性が指摘された。特に、仏教詩人アシュヴァゴーシャの作品を例に、複雑な文法形式であるアオリスト形が文法規則の実例として機能するだけでなく、音響的効果や文学的表現にも寄与していることが示された。
また、カーリダーサらの作品に見られる文法学用語を用いた比喩表現を分析し、文法学が詩的創造の基盤として機能していたことが論じられた。さらに、こうした文法比喩は当時の文学文化において高度な文法知識が共有されていたことを示すだけでなく、文法学史研究においても重要な史料的価値を有することが指摘された。
最後に、詩と文法の双方からサンスクリット文化史を描き出すという新たな研究の方向性が提示され、言語学と文学研究を横断する学際的アプローチの可能性が示された。
研究会には32名が参加し、コメンテーターの馬場紀寿教授およびフロア参加者から、言語学と人間との関係や詩の朗読、今後の研究課題などについて活発なコメントや質問が寄せられ、議論が展開された。
日時: 2026年6月18日(木)14時〜16時(日本時間)
会場:東京大学東洋文化研究所大会議室(3F)、対面のみ
発表者:川村 悠人(東京大学東洋文化研究所・准教授)
題目:詩の文法、文法の詩——南アジア古典美学の研究動向と新基軸
司会: 馬場 紀寿(東京大学東洋文化研究所・教授)
使用言語:日本語