2014年7月24日(木)、【第98回】東文研・ASNET共催セミナー / 藤岡助教 着任研究会 が開催され、藤岡洋助教(東洋文化研究所 情報広報室)による「劣化からみるデジタルコンテンツ」と題する研究報告が行われた。
直観的には劣化と結びつかないはずのデジタルコンテンツが、現在では保存と活用という問題に直面するようになってきているのはなぜだろうか。
藤岡氏によると、デジタルコンテンツはデジタルメディアとデジタルデータの2つの部分によって構成されるが、その原因はこれら構成要素の解釈に起因する。
氏はインターネットを環境としてではなくデジタルメディアと捉え直した上で、その発信者と受信者がめまぐるしく入れ替わる性格を指摘。
さらにデジタルデータが原理上プログラムとデータとの間で可逆性をもつことを指摘した上で、デジタルコンテンツの一部が活用されず、劣化していく理由は、メディアの劣化にあるのではなく、デジタルデータの構成要素であるプログラムにあるという解釈を披露した。
そして従来のプログラム設計は意図せずデータ活用に制限をかけていることから、唯一卓越したプログラムという考え方を捨てて、むしろデータ利用者にプログラムへの可能性を開くことがデジタルコンテンツの可能性を広げるという想定の下、API(Application Programing Interface)の設計・公開などを通じて、データを安全かつ幅広く長期的に利用しやすいモデルにしていくことを提議した。
報告後、約30名の参加者がデジタル化の意味、研究用データベースのあり方、今後のデジタルコンテンツの進化する方向などについて充実した議論が行われた。
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日時 : 2014年7月24日(木)14:00~15:30
会場 : 東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室
題目 : 劣化からみるデジタルコンテンツ / what about "From 1 to 0? Data Preservation and Accessibility in the Age of Information Ubiquity"
発表者 : 藤岡 洋 (東洋文化研究所・助教)
司会者 : 中島 隆博 (東洋文化研究所・教授)
使用言語 : 日本語
概要:
直観的にいって、デジタル化と劣化とは結びつかない。しかし人文社会学系研究機関のデジタルコンテンツも、現在では保存と活用という問題に直面するようになってきている。この問題に対峙するとき、活発にデジタル化が進められ始めた2000年前後の時期にデジタルコンテンツにおける劣化の意味を我々が誤解していたことに気付かされる。今回は、この問題に先鞭をつけた MLA 連携の最新議論の一つを援用しつつ、 デジタルデータの特長を再確認した上で、デジタル化されたコンテンツに対する視座を確認・検討したい。
担当:藤岡