日時:2016年8月5日(金) 午後2時~5時
場所:公益財団法人東洋文庫2階講演室
(今回の開催は東洋文庫になりますので、ご注意ください)
http://www.toyo-bunko.or.jp/about/access.html
発表題目:
「アラブの星の名前とその伝承」
鈴木孝典(東海大学清水教養教育センター教授)
「中近東文化センター所蔵の黄道十二宮図ミナイ手鉢破片-その図像学的研究-」
小林一枝(早稲田大学国際教養学部講師)
発表要旨:
(1)「アラブの星の名前とその伝承」
今日、一般に知られている星の名前の多くは、アラビア語に由来する。それはイスラーム世界の天文学がヨーロッパに大きな影響を与えたことの結果であるが、これらの星名はアラブ固有の知識の伝統に基づいており、主流のギリシャ系数理天文学の中に組み込まれていくことになったとはいえ、必ずしもその枠内には収まらない。アラブの星名について調べてみると、そこには「科学」という観点から見たイスラーム天文学とは違った、言語や文化に深く関わる別の姿が見えてくる。そこで、それがどのようなものであるか、主にスーフィーの『星座の書』とイブン・クタイバの『アンワーの書』を中心にして、その一端を紹介したい。
(2)「中近東文化センター所蔵の黄道十二宮図ミナイ手鉢破片-その図像学的研究-」
黄道十二宮の図像は、古代よりオリエント地域でしばしば美術作品に表されてきた。イスラーム時代には、ウマイヤ朝のいわゆる砂漠の離宮の一つ「クセイル・アムラ」の浴室天井に壁画として残るものを最古として、天文学書、博物誌の挿絵はもちろん、工芸作品にも好個の図案として採用された。
本発表では、イスラーム美術に残る、天球図タイプではなく独立した十二宮の図像として最初期のものと考えられる中近東文化センター所蔵の「十二宮図ミナイ手鉢破片」に関し、その図像学を再検証するものである。
この作品は、既に三上論文によって詳細な考古学的検証が試みられているが、その美術史的アプローチは十分とはいえない。
発表者は、射手座と龍の表象に焦点を当て、イスラーム世界に残る天文学、占星術の写本に伝わる図像の変遷やテキストに記された射手座の視覚的特徴などを詳細に検証し、同じく12世紀に成立した西洋キリスト教美術に伝わる射手座の図像とは明らかに異なる「イスラーム的十二宮図像」の成立を、新資料や近年目覚ましい成果があがっている博物誌の研究などを参照しながら総合的に考察していく。
共催:
国士舘大学イラク古代文化研究所
早稲田大学イスラーム地域研究機構
東京大学東洋文化研究所班研究「イスラーム美術の諸相」
日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)「イスラーム地域における物質文化史の比較研究~イベリア半島から中央アジアまで~(研究代表:真道洋子)」
担当:桝屋