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東文研セミナー「日本における公共民俗学の方向性-その理論と実践」のお知らせ

東京大学東洋文化研究所では、下記のとおり、東文研セミナーを開催いたします。
事前申し込みは不要ですので、ふるってご参加ください。

○研究集会名:「日本における公共民俗学の方向性-その理論と実践」
○日時:2012年2月11日(土)13:00~
○場所:東京大学東洋文化研究所3F第一会議室
 
○趣旨:
 柳田国男が1930 年代に立ち上げた民俗学は、同時代の問題に取り組む実践の学を目ざしたものでした。しかし、社会と実践的にかかわるという方向性は戦後の日本民俗学には引き継がれませんでした。その結果、日本の民俗学は、時代遅れの形で大衆化する一方で、同時代の問題を捉える糸口を失ってきました。われわれは、そのような流れが生じた要因に目を向けて方法論の立て直しを図るとともに、現場での取り組みの中から現在の課題を引き出していく必要があります。
 今回のセミナーでは、現場での実践と学史の再検討の両側面から「同時代の問題に取り組む実践の学」として日本の民俗学を再構築する方向性を検討します。まず、現在のフィールドから、どのようなことが問題になっているのかを具体的に析出し、それに学史の再検討を合わせて、日本における公共民俗学の構築のために、どのような道具立てが必要なのかを、ともに考えていきたいと思います。
 
○発表者と要旨:
1.山泰幸(関西学院大学准教授) 
「民俗学はまちづくりにいかに関わり得るか―徳島県での実践から―」 
【要旨】 
民俗学における社会貢献にはどのようなやり方が考えられるか。報告者は、数年前から、徳島県西部の地方自治体において、役場の職員と連携しながら、さまざまなまちづくりの試みを行ってきた。列挙すれば、学生の民俗調査による地域文化の掘り起しの活動や夏祭りの運営への参加、まちづくりに関するシンポジウムの企画・実施、商工会のメンバーを集めた地域商品開発のための研究会の定期的な開催、海外の地方自治体との姉妹都市交流を仕掛けることなど。こうした試みが、個人的な関心や資質によるものなのか、あるいは民俗学に本来的な学的性格によるものなのか。また、公共民俗学とどのように重なり得るのか、あるいはすれ違うのか。この辺りについて、自身の活動を振り返りながら考察してみたい。  
 
2.川森博司(神戸女子大学教授) 
「当事者の声と公共性―民俗誌の境界を交渉する―」 
【要旨】 
柳田国男が1930年代に立ち上げた民俗学は、まさに同時代の問題に取り組もうとする学であった。その鍵になる概念が「常民」であり、自分自身もその一部である普通の生活者(常民)を研究対象とすることが、当時の民俗学と同時代との接点であったと考えられる。つまり、民俗学者も局外的・客観的な観察者ではなく、当事者であった。あるいは、当事者性を持っていたと考えられる。そのような当事者性・同時代性を回復させるために、まず『後狩詞記』に始まる日本民俗学の民俗誌の系譜の中に、当事者の声を反映する民俗誌、あるいは当事者自身が書く民俗誌の未発の可能性を探り、従来の民俗誌の枠組みを拡大する方向を目ざす。そして、その可能性の系譜の中に宮本常一の調査と民俗誌を位置づけて、宮本民俗学を現代的に引き継ぐ方向性を検討する。そこで検討課題になるのは「有機的知識人(地方的知識人)」の役割と「文化の客体化」をめぐる問題である。ここでアメリカ民俗学における議論とすり合わせながら、宮本を古き良き時代の歩く民俗学者として礼賛するのではなく、新たな時代の問題を抱え込んだ現代の公共民俗学の先駆者として位置づけることを試みる。そして、それを引き継ぐ実践として、現代の民俗誌において何を民俗として取り上げるべきかという問題を、現在、発表者が調査・執筆に取り組んでいる兵庫県『高砂市史 民俗・文化財編』を事例に具体的に考えてみたい。 

○主催/共催:
東文研セミナー、東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会、科研基盤(B)「市民社会に対応する『公共民俗学』創成のための基礎研究」(代表:菅豊・東京大学東洋文化研究所教授)、公共民俗学研究会

○問合せ先:
室井康成(muroi〈at〉ioc.u-tokyo.ac.jp)

○備考:
当日は祝日のため、会場建物の入り口の扉が施錠されております。開始・終了時間の前後は会場担当者が扉の開閉を行いますが、途中でのご来場・ご退席の際は、扉に会場担当者の携帯電話番号を張り出しておきますので、お電話でご連絡をお願い致します。



登録種別:研究会関連
登録日時:TueJan1710:28:132012
登録者 :室井・秋山・藤岡
掲載期間:20120117 - 20120211
当日期間:20120211 - 20120211