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2024年度 第1回 定例研究会
「新たな時代の東アジア食文化研究――「食の近代化」を問う――」上田遥助教(着任研究会)

日時: 2024年6月20日(木)14時〜15時30分

会場:東京大学東洋文化研究所大会議室(3F)+ オンライン(ZOOM)

発表者:上田遥(東京大学東洋文化研究所・助教)

題目:新たな時代の東アジア食文化研究――「食の近代化」を問う――

司会:園田茂人(東京大学東洋文化研究所・教授)

使用言語:日本語

申込方法:
登録フォーム(https://forms.gle/GLXVmGTgWozULJBw6)より、6月19日正午までにお申し込みください。6月20日正午までに申込者にZoom入室用URLをお送りいたします。

要旨:
食文化研究の先駆者・石毛直道(1937−)が「東アジア食文化論」を提唱してから半世紀——石毛が残した遺産を継承しながらも、それを批判可能な学問へと開いていかなければならない。とりわけ従来の東アジア食文化研究は、特定の食品や食習慣の起源と伝播をめぐる歴史学・人類学的研究を中心としてきたため、近代以降の食文化を本格的な分析対象としてこなかった。また、石毛も「遠回りの研究であった」と自戒を込めていうように、食文化研究を健康や環境に関する今日的課題にどう結節させていくかという重要な論点も残されていた。本発表では、こうした従来の限界をふまえた「新たな時代の東アジア食文化」研究を前進させるため、報告者が取り組んできた/取り組んでいる研究プロジェクトを総括しながら考察する。   第一に、人文・社会科学における「食」の主題化過程をめぐる研究である。「食」はその身体性と卑近性ゆえに、哲学(主客二元論)や社会学(社会的事実)から追放されてきたが、それが今日いかに学術的課題として立ち現れるようになったか——この議論を主導するフランスの例をもとにその過程をみる。第二に、近刊『食の豊かさ 食の貧困』(名古屋大学出版会2024年)をもとに、社会学的視点から日本の「食の近代化」過程を分析する。今日における「食の豊かさ」は近代家族とともに誕生した食規範が戦後に全国化したものである。一方、それを支えた「家族の戦後体制」が瓦解していく中で、食生活実態との乖離も大きくなり(「崩食」とよばれる)、新たな「食の貧困」も出現している。家族社会学では日本の特異な状況を「半圧縮近代」の結果と捉えるが、果たして食生活にも敷衍できるのだろうか。食の再帰的近代の典型症状とされる崩食現象は、「圧縮近代」を生きる他の東アジア諸国にもあてはまるのだろうか。また、こうした食生活論は人々の健康面への関心に焦点化しやすいが、「持続可能性」という別次元の問題といかに共存しうるか。これらの問題への検討を進めるため、現在報告者が取り組む2つのプロジェクトをとりあげる。一つは、日本・中国・台湾・韓国の4カ国で実施した食事モデルの東アジア比較研究である。もう一つは、西洋ではすでに支配的言説となっている「プロテイン・トランジション」(植物性食品から動物性食品への移行)の東アジアにおける受容をめぐる研究である。日本・東アジアに生きる私たちは、どのように食規範を再構築していけるか——いくつかの手がかりを見出すことを本報告の目的としたい。  

 

発表者紹介:
東京大学東洋文化研究所助教。1992年生まれ。2020年京都大学農学研究科博士号(農学)取得後、立命館大学、名古屋大学(日本学術振興会特別研究員)を経て、現職。日本・フランス・東アジアを中心とした食文化とフードシステム研究に従事。トゥールーズ・ジョン=ジョレス大学(2018−2019年)、国立台湾大学(2022−2023年)にて在外研究。主著に『食育の理論と教授法』(昭和堂2021年、日本農業経済学会奨励賞)、Food Education and Gastronomic Tradition in Japan and France: Ethical and Sociological Theories(Routledge社2022年)、『食の豊かさ 食の貧困――近現代日本における規範と実態――』(名古屋大学出版会2024年近刊)。厚生労働省・健康的な食環境づくり推進委員会、農林水産省有志・地域食料ビジョン研究会、関西経済同友会・子育て問題委員会及び女性活躍委員会にて政策提言。


お問い合わせ:inquiry_20240620[at]ioc.u-tokyo.ac.jp


担当:上田・キム



登録種別:研究会関連
登録日時:TueApr2314:49:282024
登録者 :上田・キム・多田
掲載期間:20240424 - 20240620
当日期間:20240620 - 20240620