2026年9月17日(木)14時より、上田遥講師による定例研究会「アジアと食と東文研ーー人文社会科学における食の主題化/アジア化」が開催された。
本報告では近著『東アジアと食の近代化』をもとに、「食」という日常的で身近な営みが、いかにして人文社会科学の学術的主題となってきたのかを、日本とアジアの知的伝統から問い直した。食の主題化については、西洋中心の学説史が支配的であるが、日本やアジアでは独自の学的組織化がなされてきた。とりわけ1970年代以降の日本では、今西錦司・梅棹忠夫など戦後京都学派の系譜を引く石毛直道を筆頭に、京大人文研や国立民族博物館の研究者によって、食文化研究が大成され、そうした運動が韓国・中国・台湾へと波及していく。こうした東アジア食文化研究の展開を振り返り、その可能性と限界を検討した。その上で、戦後京都学派を中心とする従来の食文化研究を相対化する一つの試みとして「方法としての東文研」を掲げ、文化人類学、農業経済学など、先達の足跡を再読しながら、食文化研究のもう一つのあり方を提示した。
研究会には25名が参加し、司会の中島隆博教授および参加者から、ジャイナ教やヴィーガンなど多様な食思想の共存問題、中国哲学における「忍びざる心(孟子)」の注釈史、経済学の倫理・家政(oikonomia)への回帰、アマルティア・センと個人主義的方法論、物質的・形而下の食行為を捉える重要性について、開発学・民俗学・人類学・哲学・仏教学など多分野にわたる論点があがり、活発な議論が繰り広げられた。
日時: 2026年9月17日(木)14時〜16時(日本時間)
会場:東京大学東洋文化研究所大会議室(3F)、対面のみ
発表者:上田 遥(東京大学東洋文化研究所・講師)
題目:アジアと食と東文研――人文社会科学における食の主題化/アジア化
司会: 中島 隆博(東京大学東洋文化研究所・教授)
使用言語:日本語
要旨:本報告では近著『東アジアと食の近代化』をもとに、「食」という日常的で身近な営みが、いかにして人文社会科学の学術的主題となってきたのかを、日本とアジアの知的伝統から問い直す。食の主題化については、西洋中心の学説史が支配的であるが、日本やアジアでは独自の学的組織化がなされてきた。とりわけ1970年代以降の日本では、今西錦司・梅棹忠夫など戦後京都学派の系譜を引く石毛直道を筆頭に、京大人文研や国立民族博物館の研究者によって、食文化研究が大成され、そうした運動が韓国・中国・台湾へと波及していった。こうした東アジア食文化研究の展開を振り返り、その可能性と限界を検討する。その上で、戦後京都学派を中心とする従来の食文化研究を相対化する一つの試みとして「方法としての東文研」を掲げる。すなわち、アジア研究の国際的ハブとしての東文研、常に西洋中心的な近代化観のオルタナティブを提示し続けてきた東文研における独自の知的伝統に立ち返り、農業経済学、文化人類学など先達の足跡を再読しながら、食文化研究のもう一つのあり方を提示したい。