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2021年度 第3回 定例研究会「植民地期マグリブにおける宗教、言語とナショナリズム」渡邊祥子准教授(着任研究会)のお知らせ

日時:2021年11月18日(木)14時~16時

会場:オンライン(Zoomミーティング)

申込方法:登録フォーム ( https://forms.gle/qtcCcXmkU88q9Zom9) より、11月17日までにお申し込みください。11月18日正午までにZoom入室用URLをお送りいたします。

題目:植民地期マグリブにおける宗教、言語とナショナリズム

発表者:渡邊 祥子 (東京大学東洋文化研究所・准教授)

司会:秋葉 淳(東京大学東洋文化研究所・教授)

使用言語:日本語

要旨:
 中東・北アフリカの近代国家形成において、イスラームとアラビア語は重要なナショナル・アイデンティティーの構成要素となってきた。フランスおよびスペインの植民地支配下にあったマグリブ地域(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)においても、植民地化がもたらしたフランス文化やフランス語の覇権に対する批判と、イスラームとアラブ文化にもとづく共同体意識が、反植民地主義ナショナリズム運動の形成に大きな役割を果たした。
 他方において、一国家一言語の原則に基づく国語モデルに当てはまらず、トランスナショナルな民族意識(アラブ・ナショナリズム)に裏打ちされた言語であるアラビア語と、近代国民国家の境界線を越えて実践される宗教であるイスラームは、近代国民国家の領域的なナショナリズムに必ずしも回収しきらない性格を持ち、独立後の国家のあり方を相対化する言説・運動の拠り所になってきた側面もある。このような両面性をどのように理解し、宗教と言語がナショナリズムとどう接続し、またどう相克していると考えるべきなのか。
 本報告ではまず、国民国家形成期のイスラーム運動とナショナリズムの関係を、20世紀半ばまでのマグリブのイスラーム改革運動の事例に即して分析する。19世紀末から20世紀にかけてのイスラーム改革運動が、その後のナショナリズムの先駆(プロト・ナショナリズム)となったという定説は、イスラーム運動の独自の語彙や世界観の分析を通じて再検討されねばならない。
 次に、マグリブの植民地時代における言語習得の状況を、アラビア語の学習を政治的ナショナリズムと結びつけるこれまでの解釈を批判的に再検討しつつ、分析する。アラビア語の学習がフランス語の習得を排除していなかったという分析結果は、ナショナリスト・エリートによる、精神の言語と科学の言語の区別(日本でいう「和魂洋才」的な考え方)に基づく二項対立的な世界観を再考する上でも示唆に富む。
 なお本報告では、マグリブの植民地史研究とナショナリズム運動研究が乖離してきた状況を踏まえ、現地語史料と植民地行政文書、言説分析と社会経済的な分析を組み合わせる手法を用いる。

担当:渡邊



登録種別:研究会関連
登録日時:ThuOct2813:04:282021
登録者 :渡邊・板橋・田川
掲載期間:20211029 - 20211118
当日期間:20211118 - 20211118