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平㔟隆郎先生最終研究発表会の概要

 さる3月11日、平㔟隆郎先生による最終研究発表会(最終講義)が、当初の予定より1年遅れてオンラインで挙行されました。以下はその概要です。

概要

 冒頭、先生の研究の根幹をなす『史記』年表研究を紹介された。平㔟先生の復元された『史記』年表は『新編史記東周年表』(東京大学東洋文化研究所・東京大学出版会、1995年)にまとめられているが、そのうちの春秋時代の年表と戦国時代の年表をコピーし、つなげて示された。冊子ではわかりにくいが、繫げて一覧にすると、全体像が見やすくなる。年表に示された太線により、『史記』に示された在位年が前842年~前221年を通して連続してたどれることが示される。この太線にあたる記録は、『史記』年表にも示されているが、つなぎ方が間違っている。そのため約二割八分の部分(始皇帝統一以前)に矛盾が生じる。それを補正し繫げ直すと、その矛盾はなくなる。この復元案には、3世紀に出土した『竹書紀年』がはまり込み、近年出土の『繋年』もはまり込む。『史記』の在位年の記事を使って正しく繫げると、年代矛盾は起こらない。『史記』の年表のつなげ誤りを引き起こした理由はいくつか示されているが、この日は1点のみ紹介された。前338年を境にして、それ以前はすべて立年称元法(昭和平成方式)が用いられ、それ以後国家ごとに順次踰年称元法(伝統的な中国の方式)が使われたとすれば矛盾が起こらない。同じ材料を用い、すべて踰年称元法によるとして間違ったのが『史記』年表であるという。
 つぎに、暦について補足する。暦日一覧は『中国古代紀年の研究』(東京大学東洋文化研究所・汲古書院、1996年)にまとめられている。上記の踰年称元法が開始されたころ、76年周期の計算に基づく暦が出現した。これがいわゆる旧暦の祖先になる。詳細は紹介されなかったが、新石器時代以来のいわば当たり前のこととして、村々の農業が太陽の高さをそれぞれに判断して暦の記事をそのときどき残したこと、この状況が継承され、計算に基づく暦も国家ごとに基準の相異があることに言及された。平㔟暦日一覧発表以来、出土史料は少なくないが、すべての暦日は平㔟暦日一覧に納まる。国家ごとに異なると某国は年末でも別国ではすでに新年を迎えていたりということが起こる。みかけの上で1年の相異が記録として残る。こうした点も、年代補正には加味されている。
 どうしてこのような研究を開始されたかについて、学生のころの趣味として進められた『左伝』のカード作りが紹介された。『左伝』注釈から小国の記事を撰び、まとめられている。後に研究史をたどって、增淵龍夫氏の研究を部分修正する論文に結実したという。
 この小国の検討を基礎に、東京大学文学部漢籍コーナーに所蔵される『西周・列国金文』を渉猟して資料づくりをされたことが紹介された。また、若いころ、出土紹介されたばかりの侯馬盟書の字体比較一覧づくりも紹介された。当時は報告者も見のがしていた句点(、)の存在に気づき、文章の切り方を修正され、新しい字釈を示されている。
 春秋戦国時代は、儒教(儒学)経典と不可分の関係にあるため、後代の注釈にも一定の目配りが必要になる。例えば「仁」評価とそれを支える「天理」観に焦点を当て(問題が拡散しすぎないように学問的に重視される用語に絞り、検討対象を二十四史とその先駆に限定する)、原義の「仁」・経典の「仁」・二十四史前半の「仁」と「天理」・二十四史後半の「仁」と「天理」を検討することができる(『「仁」の原義と古代の數理』東京大学東洋文化研究所・雄山閣、2016年)。それぞれに特徴がある。世に知られる「仁」は二十四史後半の「仁」の派生義である。だから、その派生義で春秋を語ると、同時代の二十四史に始まり、その前の二十四史前半、戦国時代にできた経典、それに引用された説話の原義いずれにも相異する結果をもたらす。
 講演では、師事された先生がたのエピソード、先輩がたとの交流も紹介されたが、ここには省略する。『左伝』は使えるのか、という鋭い質問をなさった方もいらっしゃったが、これに学問的にお答えする(「かくかくしかじかの理由によって、こういう具合に腑分けすると使えます」)のにずいぶんと時間がかかった。その方の学問業績が見え隠れする中、研究を進めるほどに深さがわかり、しかも先学の補正作業(そして継承すべき基本作業の確認)にも一応の形がつけられた。とても感謝申し上げると紹介された。
 また、教養課程時代以来、書物の形で影響を受けた方々も紹介されたが、これも省略する。高校の恩師の影響にも気づかれたという。
 社会貢献と表現されたが、勤務地の求めに応じて、いろいろなさった仕事も紹介されたがこれも省略する。ただ、本学の当研究所所蔵のガラス乾板やシートフィルムの整理は、劣化による調査という緊急性もあり、いっきに進められた。これについては、今回の講演ではあまり語られなかったので、当研究所のセンター叢刊等をご参照いただくとよい。


 以上簡単にお示ししましたが、当日の講演内容を編集した動画を用意してございます。下記URLにご連絡いただきますと、「限定公開動画」としてご視聴いただけます。ここにご案内申し上げます。

URL: https://forms.gle/1L2vvQkquYgsnnE29

開催情報

【日時】 2021年3月11日(木)14:00-15:30

【題目】 春秋戰國時代をどう研究するか

【発表者】 平㔟隆郎(東洋文化研究所・名誉教授)

【開催方法】 Zoomによる

【司会】 小寺敦(東洋文化研究所・教授)

【使用言語】 日本語

問い合わせ先:研究協力担当(kenkyo@ioc.u-tokyo.ac.jp)



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuMar2511:38:512021
登録者 :小寺・田川
掲載期間:20210326 - 20210626
当日期間:20210311 - 20210311