2015年2月19日(木)の午後、東文研・定例研究会が開催され、小寺敦准教授(東洋文化研究所)による「先秦血縁集団の研究と出土資料」と題する研究報告が行われた。
近年、中国大陸では先秦秦漢時代の出土資料が急激に増加している。出土資料は当該時代の研究において新たな知見を得るために極めて重要なものである。
小寺氏は、自らのフィールドである先秦時代の血縁集団に関する研究史のあらましを説明した上で、基礎作業としての出土文献の訳注作成作業、および「譲(ゆずり)」のような一般的な慣習が「禅譲」といった思想的キーワードに変化し利用されていく問題や、系譜・地域意識の起源などに関する自身のこれまでの研究を紹介した。
小寺氏が属する簡牘研究グループによる見解であるが、出土資料の一種である簡牘は、正式な発掘により得られた「発掘簡(正式発掘簡)」(郭店楚簡など)、およびそうではない「非発掘簡(非正式発掘簡)」(上博楚簡など)に分類できる。小寺氏は、「非発掘簡」はその発見経緯ゆえに資料的信頼性の担保についてのハードルが発掘簡より高いが、甲骨や青銅器の研究史に鑑みれば、それを先秦時代を研究する資料として扱おうとすること自体は、本物と偽物の弁別を厳格に行うなど十分慎重を期す必要があるものの、可能であると述べた。
最後に今後の展望として、出土文献の解読作業を継続していくことや、血縁集団関連以外に関する領域との研究の繋がりを探ることなどが挙げられた。
報告後、コメンテーターの宇野茂彦教授(中央大学)が文献の分類と日中間歴史研究の違いについて興味深いコメントを述べた。また、約20名の参加者と報告者が系譜と地域意識の起源、中国の歴史における文字出現の意味、先秦時代の特徴などについて議論を交わし、終始充実した研究会となった。
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日時: 2015年2月19日(木)14:00-16:00
会場 : 東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室
題目: 先秦血縁集団の研究と出土資料
発表者: 小寺 敦(東洋文化研究所・准教授)
コメンテーター : 宇野 茂彦(中央大学・教授)
司会: 平勢 隆郎(東洋文化研究所・教授)
使用言語: 日本語