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第1回定例研究会「『宗教』から国民的歴史を考える ー靖国参拝違憲訴訟とフランスでのヒジャーブ法律を比較して」が開催されました

第1回定例研究会「『宗教』から国民的歴史を考える ー靖国参拝違憲訴訟とフランスでのヒジャーブ法律を比較して」が開催されました

日時 : 2014年7月3日(木)15:00-17:00

会場 :東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室

題目 :「『宗教』から国民的歴史を考える ー靖国参拝違憲訴訟とフランスでのヒジャーブ法律を比較して」

発表者:鍾 以江(東洋文化研究所・准教授)

司会:森本 一夫(東洋文化研究所・准教授)

使用言語:日本語

担当:鍾


第1回定例研究会「『宗教』から国民的歴史を考える

  2014年7月3日(木)の午後、第1回東文研・定例研究会が開催され、鍾以江准教授(東洋文化研究所 国際学術交流室)による「『宗教』から国民的歴史を考える ー靖国参拝違憲訴訟とフランスでのヒジャーブ法律を比較して」と題する研究報告が行われた。
  鍾氏の報告は、小泉元首相靖国参拝違憲訴訟とフランスのヒジャーブ禁止法律という2つのケースを比較して、現代宗教言説(信教自由、政教分離)を国民国家の歴史との関係で考察した。
  2001年から日本および東アジアの市民は信教自由の権利が侵犯されたと主張し、小泉元首相の靖国参拝違憲訴訟を起こしたが、8件の違憲訴訟はいずれも敗訴となった。原告らの究極の目的は、靖国神社が象徴する戦争肯定の歴史観との戦いであったが、歴史との戦いは信教自由の訴訟という方法で行わなければならなかった。一方で2004年にフランス政府は、政教分離の原則を守るという建前で、ムスリム女性が被るヒジャーブの公立学校での着用を禁止する法律を制定した。この法律によりヒジャーブは、フランスのアフリカにおける長い植民地支配の歴史の一部であることが隠されることになる。
  鍾氏は、普遍性を持つと思われる現代宗教言説(政教分離と信教自由)は、具体性を持つ歴史問題に対応できないとの問題提議をした。靖国訴訟とヒジャーブ法律が表しているのは、共有の感情と価値で統合されている(されようとしている)排他的共同体としてのネーションと、個人の自由と権利をベースにした抽象性と普遍性を持つ法制度としての国家の間の矛盾関係ではないかと分析した。
報告後、約30名の参加者が国民国家の枠組み、靖国神社と宗教の関係、「普遍性」の定義などについて、活発な議論が行われた。


第1回定例研究会「『宗教』から国民的歴史を考える



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuJul1011:33:012014
登録者 :鍾・山下・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20140703 - 20141003
当日期間:20140703 - 20140703