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東文研セミナー「〈フェスティヴァル〉から〈ヴァナキュラー〉な〈アート〉を考える」(科研「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」(研究代表者:菅豊)第9回研究会)が開催されました

報告

 2021年12月11日(土)13時から東文研セミナー「〈フェスティヴァル〉から〈ヴァナキュラー〉な〈アート〉を考える」が開催された。本研究会は、菅豊教授(東京大学)を研究代表とする科研プロジェクト「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」の第9回研究会である。
  研究会では、まず小長谷英代教授(早稲田大学)から「〈アート〉における〈ヴァナキュラー〉の視点—グローバル化と「フォークライフ・フェスティヴァル」」と題し、フェスティヴァルやアートに対する文化人類学・民俗学の学術的な動向を紹介し、本研究会における問題提起がなされた。
  続いて、原聖客員教授(青山学院大学文学部)の「フォークロアとフェスティヴァル-ケルト文化圏・ブルターニュの事例から」と題する発表が行われ、フランス・ブルターニュ地方におけるフォークロアフェスティバルの歴史的展開について整理と考察が行なわれた。 研究発表後、両発表者それぞれに菅教授、コメンテーターを務めた俵木悟教授(成城大学)、塚原伸治准教授(東京大学)からコメントと質疑応答があり、続いて全体討論が行なわれた。その後、約50人の参加者も交え活発な質疑応答や討論が交わされた。
  なお研究会当日は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う感染症予防の観点から、オンライン会議アプリケーションであるZoomを活用したリモート会議形式で開催された。

※本講演はJSPS科研基盤B「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」(研究課題/領域番号19H01387)の研究成果である。

当日の様子

開催情報

日時:2021年12月11日(土)13:00~

会場:オンライン開催(オンライン会議システムZoomを使用)

発表者:小長谷英代(早稲田大学社会科学総合学術院社会科学部)「〈アート〉における〈ヴァナキュラー〉の視点—グローバル化と「フォークライフ・フェスティヴァル」」
    原聖(青山学院大学文学部客員教授)「フォークロアとフェスティヴァル-ケルト文化圏の事例から」

コメンテーター:俵木悟(成城大学文芸学部)
        塚原伸治(茨城大学人文社会科学部)

コーディネーター:小長谷英代、菅豊(東京大学東洋文化研究所)

趣旨:
 〈ヴァナキュラー〉の視点から〈アート〉を考える時、〈フェスティヴァル〉は注目したいテーマの一つである。〈フェスティヴァル〉は社会空間の多様な文脈の交錯に生成されるとともに、歴史の中で常に新たな形や意味に再生され、学術概念には容易に捉え難い対象である。とりわけ、20世紀以降の大衆化や商業化等の都市的要素の拡大においては、学術性や科学性を強調していた文化人類学的・民俗学的研究では、どちらかといえば敬遠されがちなテーマであったかもしれない。とはいえフェスティヴァルには大衆性や商業性に拘らず、社会や土地の歴史、信仰、価値観、アイデンティティ、あるいは対立や疎外等、日々の生活に関わる集団・個人の関係、経験、記憶等、文化/アートの理解には重要な文脈が内包される。〈ヴァナキュラー〉を考えるうえでも主要なテーマであり、より踏み込んだ研究が求められる
 殊に今、〈フェスティヴァル〉は、これまで以上に文化人類学的・民俗学的観点が活かされるべき場である。1980年代以降、グローバル経済の下で急速に広まる創造都市や創造産業等の趨勢では、「フォーク・フェスティヴァル」を含む、多種多様な「アーツ・フェスティヴァル」が世界各地に増加・拡散し、その存在感を強めている。学術研究では、今や〈フェスティヴァル〉は文化領域というより、経済、観光、都市開発等の領域が主導するテーマに置き換えられつつある。こうした現実に文化人類学的・民俗学的研究はどのように関わっていくのか。今回の研究会では、〈フェスティヴァル〉に焦点をあて、あらためて今日のアート/文化への両領域のアプローチおよび現代社会における位置や方向性を見直す。すなわち、〈フェスティヴァル〉を今日、アート/文化の歴史・社会的意味等に起きている大きな変動や問題が凝集される場とし、具体的な事例から、領域が今日置かれている学術研究や社会的関心・動向を捉えながら、「アート」における「ヴァナキュラー」を考える契機としたい。【文責: 小長谷英代】

■共催:「野の芸術」論研究会(科研「「野の芸術」論―ヴァナキュラー概念を用いた民俗学的アート研究の視座の構築」グループ(研究代表者:菅豊))、現代民俗学会

担当:菅



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuDec1613:23:522021
登録者 :菅・田川
掲載期間:20211217 - 20220217
当日期間:20211211 - 20211211