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東文研セミナー「科研「パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」(研究代表者:菅豊)第7回研究会」が開催されました(※クローズド形式)

報告

 2018年8月4~5日、菅豊教授(東京大学東洋文化研究所)を研究代表者とする科学研究費補助金基盤研究(B)「パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」の第7回研究会が開催された。
 本セミナーでは、滋賀県内で盛んに制作されている郷土史(字誌)や自分史に関する出版物について、その中でも本を作り出す行為、特に出版そのものに注目し、基盤となる地域出版社の活動について議論が進められた。それは、郷土史や自分史といったローカル・ヒストリーやプライベート・ヒストリーを、出版という行為を通じてパブリック・ヒストリーに再定置させるプロセスとその意味についての、研究者、出版者双方の視点からの検証となった。
 話し手である市川秀之教授(滋賀県立大学)は、滋賀県内で出版される字誌には、地域や個人の人生にとって象徴的な物語(トピック)を配列しそれぞれの歴史を認識するトピック配列的歴史叙述が主流となっていることを明らかにした。またこういったトピック配列的な歴史叙述によって字誌を描き出す行為が、新住民の多い地区における歴史を中心とした町づくりに活用される実践の現場について紹介している。
 岩根治美氏(サンライズ出版株式会社専務取締役)は出版社の視点から、滋賀県内における字誌や自分史に関する出版の現状について、これまで実際に出版された出版物を交えながら紹介した。サンライズ出版は、40年以上滋賀県内の字誌や自分史の出版を精力的に進めてきた出版社であり、字誌などローカル・ヒストリーを出版物の形でパブリック・ヒストリーに再定置させる現場そのものである。その現場において、研究者、出版者という双方の立場から、出版に伴う課題や今後の展望について活発な議論が交わされた。
 セミナー終了後には、滋賀県各地の郷土史研究、郡誌編纂に携わった中川泉三(1869-1939)が残した滋賀県指定歴史資料「章斎文庫資料」の見学や、郷土史を住民自らの手で展示する集落博物館の中から、米原市立伊吹山文化資料館や湖南市菩提寺まちづくりセンター内に開設された菩提寺歴史文化資料室の見学が行なわれ、関係者との間で意見交換が行なわれた。

当日の様子

開催情報

日時: 2018年8月4日(土)14:00~16:00

会場: サンライズ出版(滋賀県彦根市鳥居本町)、菩提寺歴史文化資料室(滋賀県湖南市菩提寺)ほか

スケジュール:
1日目(8月4日)
14:00―16:00「パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」第7回研究会(※クローズド形式)
 会場:サンライズ出版(滋賀県彦根市鳥居本町) HP:http://www.sunrise-pub.co.jp/
 〇話し手:市川秀之(滋賀県立大学)
岩根治美(サンライズ出版株式会社専務取締役)
 〇進行:菅豊(東京大学東洋文化研究所)
16:00―17:30 米原市立伊吹山文化資料館見学

2日目(8月5日)
10:00―12:00 米原市章齋文庫見学
14:00―15:00 湖南市菩提寺歴史文化資料室見学

主催:日本学術振興会科学研究費補助金「パブリック・ヒストリー構築のための歴史実践に関する基礎的研究」(研究代表者:菅豊)、東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会(主任:菅豊)

担当:菅



登録種別:研究活動記録
登録日時:ThuAug2312:34:562018
登録者 :菅・川野・藤岡
掲載期間:20180805 - 20181105
当日期間:20180804 - 20180805