2020年11月13日、光州市立の5・18民主化運動記録館との共催で開かれたシンポジウム「境界を越える画家・富山妙子の人生と芸術」は、光州事件をリアルタイム描き、韓国民衆美術を励ました画家に関する行事とあって、かねてより光州・全羅道を中心に高い関心を集めていた。オープニングでは韓国でなかなか目にすることが難しかったスライド「倒れた者への祈祷」が小林宏道学芸員による解説付きで上映され、午前の部の結びには富山妙子本人がZOOMに登場し挨拶をしたことも大きな話題となった。
午後に行われた真鍋祐子、徐潤雅、李美淑、鄭根埴による学術発表にもまして、各人の報告に対する4名のコメンテーター(金明姫、洪允梨、高橋梓、稲葉真以)による討論はいずれも富>山の画業に対するリスペクトに根差し、それがゆえに熱を帯びたものとなり、また美術史のみならず、社会学や文学など多様な分野から読み解ける富山作品の神髄を示すものとなった。
11時より始まった本行事は7時間超にも及び、途中でYouTubeのオンライン回線が途切れるなど技術上のトラブルも発生したが、最後まで緊張感が途切れることなく終了した。光州の5・18民>主化運動記録館での対面参加者と、日本からのZOOM参加者、およびYouTube配信をライブで視聴した人数を合わせると、約100名の参加者を集め、盛会のうちに終えることができた。
小林学芸員による解説、およびシンポジウムの予稿集PDFは下記のURLからダウンロードできる。
https://www.518archives.go.kr/?PID=054&bbsSn=00723
また、当日の模様は下記のYouTubeチャンネル(日韓同時通訳付き)から視聴できる。
https://www.youtube.com/watch?v=ItDc_ZUa_xs&t=14315s
時間 | 発表および討論 |
---|---|
午前 司会:洪仁和(5・18記録館) | |
11:00~11:20 | 開会式・あいさつ 鄭龍和(5・18民主化運動記録館館長), 李静和(成蹊大学) |
11:20~12:10 | スライド「倒れた者への祈祷」上映 (解説・小林宏道) |
12:10~12:30 | 富山妙子さんとの中継、記念写真撮影 |
午後 司会:李榮眞(江原大学) | |
14:00~17:40 | 真鍋祐子(東京大学)「富山妙子とはだれか:その人生と作品の世界」 討論 金明姫(慶尚大学) 徐潤雅(立命館大学)「富山妙子の目に映った光州と韓国―1970~1980年の作品変遷過程を中心に」 討論 洪允梨(光州市立美術館) 李美淑(立教大学)「富山妙子の芸術運動とトランスナショナルな連帯―金芝河の詩と光州5・18を中心に」 討論 高橋梓(延世大学) 鄭根埴(ソウル大学)「5・18の視覚的形象化と歴史共同体―富山妙子、洪成潭、李應魯を中心に」 討論 稲葉(藤村)真以(光云大学) |
会場:(オフライン会場:5・18民主化運動記録館7階)
主催:5・18民主化運動記録館、東京大学東洋文化研究所、日本学術振興会科学研究費(課題番号17H06180)
後援:文化財庁、光州広域市
担当:真鍋