News

パッタジット・タンシンマンコン講師が第23回アジア太平洋研究賞「佳作」を受賞しました

 パッタジット・タンシンマンコン講師の『タイ外交史を読み直す―「竹の外交論」からの脱却―』により、第23回アジア太平洋研究賞「佳作」を受賞しました。なお、授賞式は8月1日〜2日にアジア太平洋フォーラム・淡路会議の中で執り行いました。その研究成果は、2024年度内に東京大学出版会から上梓する予定です。


要旨:
  本論文の目的は「竹の外交論」(英:Bamboo Diplomacy, タイ:Pai-Lu-Lom)という従来のタイの外交言説において主流であり続けてきた考え方を批判的に検討し、新たな歴史観を示すことである。従来、タイの外交手腕は巧みな「竹の外交論」という言説で説明されてきた。この言説は、聡明な歴代の指導者がその時代に合わせて主体性を放棄し、中、英、仏、米、日などの大国の風向きに巧みにしなった結果、タイが東南アジアで近代を通じて唯一独立を維持できたという論理である。今まで暗黙の常識とされてきたこの「竹の外交論」は、指導者の明敏性、タイの特殊性、外交伝統の継続性に焦点を当てることにより、タイ例外主義を助長し、ナショナリズムの醸成に利用されてきた危険性を孕んでいる。
  本論文は「竹の外交論」を論敵として設定し、従来の研究では使用されてこなかったタイ日英中4か国語の外交文書、論文集、メディア論調を資料として、国際情勢が激しく変化する1960年代から2020年までの複雑な国際情勢と国内政治におけるタイの指導者、メディア、知識人、一般市民の対外認識と外交政策との重層的な関係性を多角的・立体的に再現する。タイの対外政策を決定する最も重要な要素は何かを問い直しながら、これまで見過ごされてきた様々な主体の抱える葛藤、対応の工夫、行動選択の論理を外交史に書き込み、新たな歴史観を示すのが本研究の目的である。

 

 



登録種別:研究活動記録
登録日時:MonSep215:01:192024
登録者 :パッタジット・多田
掲載期間:20240903 - 20241202
当日期間:20240801 - 20240801