2021年9月25日(土)と9月30日(木)の2回にわたって第2回オスマン帝国史研究セミナーがオンラインで開催された。
今回は、トルコのミーマール・スィナン芸術大学のエブルー・アイクト氏を講師として招聘し、1860年代オスマン帝国のニザーミーエ法廷(制定法裁判所)における尋問調書を参加者とともに読み解いた。
初日の第1部ではまず、アイクト氏より、尋問調書が作成されるようになった制度的背景と文書作成プロセス、そして尋問調書の史料的特徴、それが豊かな社会史、マイクロヒストリーの史料になることについての解説と、今回読む史料が扱う案件の概要についての説明があった。続いて、ヘルツェゴビナの村で起きた、「夫を毒殺したとされる女性」の案件についての尋問調書を講読した。第1部では、被害者の兄弟に対する尋問調書を読み終えた。
2日目の第2部では、毒殺の容疑者本人による供述と、村の一住民の尋問調書を輪読した。毒殺という行為はもちろんのこと、毒の入手方法、村人らによるインフォーマルな裁判、「魔女」が殺したという供述など、きわめて興味深い内容であった。一通り読み終えた後、質疑応答とアイクト氏による解説があり、妻による夫の毒殺が当時の社会において稀なケースではなかったことや、毒の売買の規制の問題、法医学の登場など、この事件を歴史的社会的文脈に位置付ける説明がなされた。
セミナーには修士課程の大学院生からベテランの研究者まで幅広い参加があり、参加者は第1部に25名、第2部に20名で、専門的な内容にもかかわらず、盛会であった。アイクト氏は本セミナーの趣旨をよく理解してくださり、時間を超過するほど熱心に話をしてくださった。本セミナーでは英語とトルコ語が使用される予定だったが、とくに後半はトルコ語中心になり、トルコ語の聞き取りに難を覚える受講者に対するフォローが若干行き届かなかったことが、次回に向けての反省点である。(秋葉)
第1部
日時:2021年9月25日(土) 16:00〜18:15
場所:Zoom開催
エブルー・アイクト Ebru Aykut (Mimar Sinan Güzel Sanatlar Üniversitesi)
"A Rich Source for Socio-legal History: The Interrogation Protocols at the 19th- Century Nizamiye Courts"
16:00 開会の挨拶(秋葉淳)
16:10 史料の解説
16:40 史料講読と討論(史料1,2)
18:15 第1部終了
第2部
日時:2021年9月30日(木) 16:00〜18:15
場所:Zoom開催
エブルー・アイクト Ebru Aykut (Mimar Sinan Güzel Sanatlar Üniversitesi)
"A Rich Source for Socio-legal History: The Interrogation Protocols at the 19th- Century Nizamiye Courts"
16:00 開会の挨拶(秋葉淳)
16:05 史料講読と討論(史料2,3)
18:10 閉会の挨拶(秋葉淳)
担当:秋葉