来日中の三名のインド人研究者にインドの農村社会の発展の歴史と現在に関してそれぞれの視点からご報告いただきました。
最初の報告者であるVijay Kumar Thangellapali 氏(Associate Professor, Department of History, Sikkim University)は南インドにおけるライヤットワーリー制とその影響について議論されました。伝統的な農法の放棄、商品作物栽培の増加とともに、農民が借金の増大に苦しみ、その結果として土地を失って農業労働者が増大したことなどが強調されました。その後、会場から柳澤の議論との関連性や、ザミンダーリー制が残った北インドと比較して南インドにおいてライヤットワーリー制が資本主義や民主主義の浸透に果たした役割などに関する質問がなされました。
二人目の報告者Bhangya Bhukya 氏(Associate Professor, Department of History, University of Hyderabad)はインド先住民アディバシ(Adivasis)の歴史について、紀元前1500年のアーリア人の移住から現代に至るまで報告されました。英国植民地期に彼らの権利が奪われ、指定部族(Scheduled Tribes)と括られていった経緯や、現在の問題として政策決定への参加ができていないことなどが詳説されました。質疑応答では、アディバシの問題についてアカデミックの果たしている役割、前植民地期においてアディバシが農業発展に果たした役割の重要性、議席留保制度と政治参加の関係性など幅広い議論が行われました。
三人目の報告者Jagannath Ambagudia氏 (Associate Professor, Tata Institute of Social Sciences Guwahati Campus)は東パキスタンからのベンガル難民に対応するために1958年から実施されたDNK Projectの内容とその変遷について詳説された上で、オディシャ州におけるアディバシコミュニティと東パキスタンからのベンガル移民コミュニティの土地や資源、政治、文化をめぐる衝突についての分析を披露されました。報告者が主にアディバシ側からの視点だったのに対し、質疑応答ではベンガル移民、その他の人々からの視点や立場について議論が行われました。
本セミナーは、以下の共催で行われました。
東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク(ASNET), 日本学術振興会・インドとの共同研究(ICSSR)「農村資源の重層的ガバナンスの歴史と現在:日印の比較制度分析」(代表:櫻井武司(東京大学大学院農学生命科学研究科)南アジア地域研究(NIHUプログラム)東京大学拠点(TINDAS)
日時:2017年9月28日(木)17時00分〜19時00分
場所:東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所3階 第一会議室
使用言語:英語
プログラム:
17時00分-17時05分: | 趣旨説明 |
17時05分-17時40分: | (発表25分+質疑10分) “Land Revenue Settlements and Property Rights: Peasant Insecurity and Sufferings in Colonial South India”, Vijay Kumar Thangellapali (Associate Professor, Department of History, Sikkim University) |
17時40分-18時15分: | (発表25分+質疑10分) “Indian State and its Adivasis/indigenous people”, Bhangya Bhukya (Associate Professor, Department of History, University of Hyderabad) |
18時15分-18時25分: | 小休憩 |
18時25分-19時00分: | (発表25分+質疑10分) “Competing Communities and Sites of Marginality: Adivasis/Indigenous People, Migrants and the State in India”, Jagannath Ambagudia (Associate Professor, Tata Institute of Social Sciences Guwahati Campus) |
担当:池亀