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徐行助教 着任研究会「文献から見る中国の「新しい」司法改革」が開催されました

報告

 2013年の中国共産党18期3中全会が「改革の全面的深化における若干の重大問題に関する中共中央の決定」を公布し、「法治中国」建設の強化を掲げ、中国共産党中央が初めて司法改革を直接指揮・推進するようになった。2014年の同4中全会は司法改革の目標・措置の具体化を図り、中国の「新しい」司法改革を軌道に乗せた。その中でも特に注目されているのは人民法院(裁判所)の独立に関する改革である。徐氏の報告は限られた公開資料をもとに、法院と裁判官の独立を制約する諸要因に関する制度改革の中身とその効果を検証するものであった。
 中国の裁判官の人事権は地方の党委員会に掌握されており、法院の財政権は同人民政府に握られているため、党を媒介とする外部からの干渉・介入を受けやすい。法院内部でも裁判実務を担当する裁判官が院長を筆頭とする法院幹部(管理職)からの影響を日常的に受けている。司法の独立に反するこれらの現象を排除するために、司法改革は裁判官定員制の導入、省レベル以下の法院の人事・予算・資産の統一管理の模索、幹部による司法への干渉に関する記録・責任追及制度の確立といった措置を実施した。
 本報告はこれらの改革措置に関する規定の内容を説明するとともに、上海や北京、深圳といった地域の改革前後の状況を比較し、公開された情報だけを見ても、改革の目標と実際の効果との間に大きな隔たりが存在していることを明らかにした。また、日本との比較を通じて、表面的な情報だけでは中国における問題の本質が見えにくいが、現地調査で実情を把握するのも困難であるという認識を示した。
 報告後、約15名の参加者が加わり、中国における裁判の機能、司法改革を推進する中国共産党の意図、改革の成果に対する評価、あるいは今日の中国司法と伝統文化・哲学との関係性、及び中国社会が近い将来に民主化を実現する可能性などについて、充実した議論が行われた。

当日の様子

開催情報

【日 時】2016年10月13日(木)午後2:00~4:00

【会 場】東京大学 東洋文化研究所 3階 大会議室

【題 目】文献から見る中国の「新しい」司法改革

【発表者】徐 行(東洋文化研究所・助教)

【司 会】髙見澤 磨 (東洋文化研究所・教授)

【使用言語】日本語


【概 要】
  2014年に始まった中国の「新しい」司法改革は、中国共産党18期4中全会の「法による国家統治の全面的推進」に関する決定を受けて、初めて国全体が取り組む一大プロジェクトとして推し進められるようになった。ところが、人民法院が主体となって推進してきた今までの司法改革と違って、今回のそれは積極的な宣伝活動を伴っているものの、その具体的な目標・制度設計・進展状況に関する情報公開は、むしろ以前よりも消極的になっている。
 本報告は文献資料の分析を通じて今回の司法改革の「公開されている」現状を検討するとともに、中国の実情を調査する際の困難と障害を提示したい。

担当:徐



登録種別:研究活動記録
登録日時:MonNov711:33:262016
登録者 :徐・野久保(撮影)・山下・藤岡
掲載期間:20161013 - 20170113
当日期間:20161013 - 20161013