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東文研セミナー「女性の法的地位とジェンダー〜サハル・マランルー氏を迎えて」が開催されました

報告


  2017年2月13日(月)17時より、東文研セミナー「女性の法的地位とジェンダー」が開催された。本セミナーは、東文研を拠点とする科研プロジェクト「イスラーム・ジェンダー学の構築のための基礎的総合的研究」の公募研究「イスラーム家族・女性関連法案の運用実態の研究」の主催によるものである。本セミナーでは、英国オクスフォード大学フェローのサハル・マランルー博士を講師に迎え、モデレーターの細谷幸子氏と司会の山﨑和美氏の他、10名が参加した。当初予定していた2時間を超過するほど積極的な議論が交わされ、イランにおける女性の法的地位に対する参加者の関心の高さが伺えるセミナーとなった。
  Access to Justice in Iran: Women, Perceptions, and Reality, Cambridge: Cambridge University Press, 2014の著者であるマランルー博士は、女性の司法アクセス、法と社会、ジェンダー、イランの法制度、エンパワメントなど幅広い研究を行っておられる。本セミナーでマランルー博士は、イランの婚姻や離婚、子どもの親権などの現状とそれに関連する法制度における女性の地位について講演し、イランの法律そのものがイスラーム法との関係上、多重で多層的であるという現状を明らかにした。こうした現状の中で、イランの女性たちは家族法における女性の地位の向上のために闘ってきたという点、女性の教育や雇用状態の向上という社会変化の後押しを受けて、イランの女性団体が家族保護法の改正に道を開いてきたという点が主に考察されていた。
  マランルー博士の講演に関し、シャリーアにおける女性の法的地位、シーア派十二イマーム派の一時婚、離婚、家庭内暴力など、多くの質問がなされた。これらの質問に対し、スンナ派諸国における状況との違いに触れつつ、現代イランの男女の婚姻年齢、離婚後の子どもの後見と扶養、結婚式の実態、NGOの活動、慈善活動、婚資や嫁入り道具、SNSの使用状況、クルアーンの規定など広範囲に渡る実態を踏まえながら、応答がなされた。

(報告:横浜市立大学 山﨑和美)

当日の様子


開催情報

【日 時】
2017年2月13日(月)17:00〜19:00

【場 所】
東京大学東洋文化研究所3階大会議室
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_12_02_j.html
最寄駅:東京メトロ丸ノ内線/都営大江戸線(4番出口)本郷三丁目駅
東大・懐徳門から入って、緑の小道を抜けた右手、正面玄関に唐獅子像のある建物

【プログラム】
17:00〜17:10 研究会の趣旨説明および報告者紹介
17:10〜18:10 講演 Islamic Family Law in Contemporary Iran
18:10〜18:30 休憩
18:30〜18:50 質疑応答
*終了後に講演者を交えた懇親会を予定しております。

【講演者】
サハル・マランルー氏 Dr. Sahar Maranlou(Oxford University)
Dr. Sahar Maranlou is the author of Access to Justice in Iran: Women, Perceptions and Reality (Cambridge University Press, 2014). She has written extensively on topics such justice, law and society, gender, Iranian legal system, empowerment and has taught at the University Warwick and the University of Brunel in the UK.

【講演内容】
Islamic Family Law in Contemporary Iran
The objective of this presentation is to explain women’s personal status law (marriage, divorce, custody and guardianship) within the Iranian legal system. The discussion around gender and Iranian family law is a multifaceted subject because the legal system itself is pluralistic and multi-layered. The Iranian legal system is rooted in both secular and religious sources yet Islamic Law (shari’a) has been recognized as the main source of law in Iran’s constitution. Women in Iran have struggled to achieve more equal legal status and accordingly family law has undergone several developments and changes. The combination of different socio-legal dynamics such as increased women’s education and employment; and the efforts made by various women’s groups, have paved the way for some reforms in family law.

【その他】
参加無料・事前登録不要

【主催】
科研費・基盤研究A「イスラーム・ジェンダー学構築のための基礎的総合的研究」(代表:東京大学長沢栄治)イスラーム家族・女性関連法の運用実態の研究(第2回研究会)

【共催】
東洋文化研究所 班研究「中東の社会変容と思想運動」

担当:長澤




登録種別:研究活動記録
登録日時:MonMar613:15:132017
登録者 :長澤・後藤・野久保(撮影)・藤岡
掲載期間:20170213 - 20170513
当日期間:20170213 - 20170213