本セミナーでは、はじめに永島育氏(本研究所ポスドク研究員/日本学術振興会特別研究員PD)が2025年刊行の自著『オスマン帝国の陸軍と暴力』(山川出版社、2025年)の内容を紹介した後、秋葉淳氏(本研究所教授)によるコメント、質疑応答が行われた。参加者は会場12人、オンライン28人と盛況であった。
永島氏は、研究をはじめたきっかけや、山川モノグラフから刊行した背景について説明を行った後に、著書の構成と大まかな主張やねらい、各章ごとの内容を紹介した。それによれば、本書は、近現代史を特徴づける暴力について、オスマン帝国の非正規戦争における暴力に着目して論じた研究である。そこで生じた暴力は、皇帝専制という国家構造および軍隊の組織文化に起因し、それは丸山眞男の「抑圧移譲」という概念とも通底するものであった。今後の展望として、他地域の植民地戦争との比較、暴力に関する記憶の問題、またオスマン帝国軍とトルコ共和国軍の連続性が挙げられた。
コメントを行った秋葉氏は、本書の評価点として、オスマン陸軍研究が日本で行われてこなかったこと、非軍人による軍事史研究であること、なかでも非正規戦争における暴力に着目した視点のオリジナリティや、青年トルコ革命前後の時期を、従来後景に退いていた軍隊の側から描いたことなどを挙げた。質疑応答では、著作中に登場する人物の素性、皇帝への忠誠を判断する基準、丸山眞男の抑圧移譲の言葉を援用する妥当性、組織文化から暴力を捉えることで見えなくなるもの、革命後のブルガリア人との関係とのギャップについてなど、活発な議論が行われた。(文責:鈴木真吾)
日時:2026年3月12日(木) 13:30〜15:00
会場:東京大学東洋文化研究所3階第1会議室/Zoom 報告者:永島育(東洋文化研究所/日本学術振興会)
題目:ブックトーク『オスマン帝国の陸軍と暴力』
司会:秋葉淳(東洋文化研究所)
著者による著書紹介:https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=FriNov141456422025