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貨幣は交換の手段なのだけれども、交換という行いが人々の選択における自由度と交渉における制約の程度の差異によって多様であるので、貨幣も多元的に生成し、実際には複数の貨幣が補完しあう関係が現れる。
世界史上、人類の多数を占めてきた農民たちは直接かつ多数で交渉できる範囲で交換できるよう様々に取り決めを構成するが、間接二者間交渉を仲介するための手段とは可変的な接続にしておくことで、交換の安定性が担保されてきた。その可変的な関係が失われていく過程としての人類の歴史を明らかにすることが本書の企図である。
13世紀、モンゴル帝国下において全ユーラシア規模で貢納送付が交錯したことによる隔地取引での共通貨幣単位の出現が導火線となり、16世紀末からの銀の全地球的流通が現地取引と隔地取引の関係を再構成させていき、可変接続と固定接続の機構がせめぎあうが、19世紀末からの国際金本位体制のもと、人々が高い自由度をもって直接交渉する交換を支える仕組みは抵抗しつつも、確定性を高めることに傾斜した仕組みに吸収されていく。
確定性と安定性の識別をしない政治経済学は如上のような人類の大多数の営みを考慮することなく、往々にして目的論的な言説に安住してきた。
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