毎年七夕の時期に開催されるオスマン史研究会の第13回定例大会が、2024年7月6日(土)にハイブリッド形式で開催された。会場の参加者は28名、オンライン参加者はトルコからも含む42名であった。
岩元氏の報告は、第二次立憲政期にイスタンブルで刊行された仏語紙『暁』をもとに、オスマン・シオニズムにおける国家観・民族観を分析したものであった。氏は、同紙がオスマン帝国への愛国心やムスリム・トルコ人との友愛を強調する一方で、民族的アイデンティティの核としてユダヤ教を重視していたことを、ロシア・シオニズムと比較しつつ、明らかにした。 報告の後、ベン=グリオンやベン=ツヴィとの関係(『暁』では言及されない)、マスキリーム(ユダヤ人啓蒙主義者)という概念(研究上の概念)、ラディーノ語への態度(冷淡)などについて質疑応答が交わされた。
髙松氏の報告は、1743年に建設された財務長官府の最初の官衙が、マフムト1世の帝室図書館ワクフの財源を使って建設されたワクフ物件であったことを明らかにしたものであった。財務長官府は、その各部屋から賃料が取られるワクフ財源となったため、立地や間取りについての情報がワクフ文書に記されており、同組織の部局の構成についても新たな発見があった。報告を受けて、敷地の入手方法(不明だが帝室の私有地だったのでは)、部屋以外の要素(階段・中庭などの記載はない)、図書館ワクフの収入が両聖都財庫に収納された理由(黒人宦官長が帝室ワクフの監督官だったため)などの質問があった。
日時:2024年7月6日(土) 14:00〜17:50
会場:東京大学東洋文化研究所3階大会議室/Zoom
プログラム:
司会 秋葉淳(東洋文化研究所) | |
14:00〜14:10 | 司会挨拶 |
14:15〜15:35 | 岩元恕文(九州大学) 「オスマン・シオニズムにおける民族観・国家観:イスタンブルでの活動を中心に1908~1919年」 |
16:10〜17:30 | 髙松洋一(東京外国語大学) 「財務長官府と帝室図書館ワクフ:マフムト1世のワクフ物件だった「最初の」財務長官府 (1743–1755)」 |
17:30〜17:50 | 総合討論 |
担当:秋葉