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髙橋昭雄教授 最終研究発表会「日本の村からミャンマーの村へ」のお知らせ

【日時】 2023年3月16日(木)14時~16時

【会場】オンライン(Zoomミーティング)

【申込方法】
登録フォーム ( https://forms.gle/hfmewZWyBhpwhkCr5) より、3月15日(水)正午までにお申し込みください。
お申し込みいただいた方には、16日午前までにZOOMミーティング入室用リンクをお送りいたします。

【題目】日本の村からミャンマーの村へ

【発表者】髙橋 昭雄 (東京大学東洋文化研究所・教授)

【司会】青山 和佳(東京大学東洋文化研究所・教授)

【使用言語】日本語

【要旨】
 私のビルマ(ミャンマー)研究は1982年、農村調査は1986年、ビルマ式社会主義の末期から始まる。それ以来、軍事政権、そして民主化(残念ながら2021年2月以降の軍政下では、2023年1月に短期間農村を訪ねたのみで本格的調査はできていない)と体制が変わる中で、200を超える村々を訪ね、1万人を超える人々にインタビュー調査を行ってきた。
 研究を始めた当初、ビルマ式社会主義という特殊な政治経済体制の下、農業・農村に関する法律や政策が個々の村人の生活までも厳しく縛っていたように思われたので、まずはそれらの性格の分析から始めた。人々の生業や生活の細部に至る綿密な調査から次第に明らかになってきたのが、農政の現実規制力だけではなく、それを巧みに変形する下からの力だった。私はこれをナーレーフムと呼ぶことにし、下級役人と村人との二者間の了解や妥協と定義した。この二つの力関係の中で生起する「生きた制度」の中で、村人たちがどのような社会経済生活を送っているのか、という視点から、ミャンマーの体制転換と村落社会の変容を見つめつづけてきた。その中で、農地関係法と実態の乖離、供出制度と計画栽培制度の規制力、商品経済の浸透と農業経営の変化、農村に多数居住する非農民の経済生活、電化・情報化・動力化と農村生活の変貌、社会経済階層の規定要因と階層変動などに関して、様々な新説を唱えてきた。そして、その変容の方向を「脱農化(De-agrarianisation)」と総括した。
 一方、日本の村の専業農家の長男として生まれ育った私には、ミャンマーの村をはじめて訪れた時から現在に至るまで、ミャンマーの村は村ではない、という感覚が常にある。だが、その感覚を理論化するまでに30年以上かかってしまった。それが「村落共同体不在論」である。この理論によって、なぜミャンマーの村では組織が簡単にできるがすぐに消えてしまうのか、コミュニティ開発がなぜうまくいかないのか、村人たちはなぜ自由で自律的に生きているのか、なぜ村落間移動が激しいのか、外国人である私をなぜすぐに受け入れてくれるのか、といった疑問が一気に解消される。
 本発表では、私が訪れたミャンマーの村々の写真を提示しながら、村落社会の変容を語った後に、「ミャンマーの村とは何か」について私の知見を展開したい。

【問い合わせ先】final_lecture_20230316 [at] ioc.u-tokyo.ac.jp

担当:髙橋



登録種別:研究会関連
登録日時:MonFeb610:05:152023
登録者 :髙橋・田中・田川
掲載期間:20230207 - 20230316
当日期間:20230316 - 20230316