2026年2月9日、大阪公立大学の上野雅由樹氏を東洋文化研究所に迎えて、東文研セミナー「ブックトーク Managing Religious Diversity in the Ottoman Empire: Experiences of Istanbul Armenians in the Nineteenth Century」が開催された。会場参加者11名、オンラインでは25名の参加者があった。
上野氏は2025年4月に、エディンバラ大学出版会から著書 Managing Religious Diversity in the Ottoman Empire: Experiences of Istanbul Armenians in the Nineteenth Century を刊行した。本セミナーでは著者の上野氏に、本書を執筆・出版するに至った背景や、本書のねらいや主たる議論、そして今後の展望を語っていただいた。上野氏は、かつて「ミッレト制」と呼ばれていたものをどう説明するかという問題意識から、高位聖職者とオスマン帝国との関係の変化に着目した。そして、各宗教共同体が「ミッレトとしての地位」を与えられることで共同体としての権利が公認されたという従来の解釈を否定し、「ミッレトとしての地位」なるものはそもそも存在せず、むしろ「宗教的特権」こそが権利主張の根拠として用いられたことを強調した。続いて、本書の内容を、オスマン帝国のアルメニア人高位聖職者および俗人エリートとの関係と、「宗教的特権」の問題に絞って紹介した後、今後の研究についていくつかの構想を披露した。
質疑応答では、非ムスリムの各共同体相互の連携はなかったのか(影響や参照関係はあるが共同で何かをやっていたようには見えない)、財務取扱人などのアルメニア人エリートとオスマン帝国との密接な関係は18世紀からあったのではないか(カトリック改宗などアルメニア人内の問題で財務取扱人に頼った形跡はない)、英語で研究を発表するときのスタンスや読者の想定をどうしているのか(研究が北米中心、査読を経て発表したい)、などさまざまな質問が寄せられた。
日時:2026年2月9日(月) 17:00〜18:30
会場:東京大学東洋文化研究所3階第1会議室/Zoom
報告者:上野雅由樹(大阪公立大学)
題目:ブックトーク Managing Religious Diversity in the Ottoman Empire: Experiences of Istanbul Armenians in the Nineteenth Century
司会:秋葉淳(東洋文化研究所)
著書の紹介:https://edinburghuniversitypress.com/book-managing-religious-diversity-in-the-ottoman-empire.html