2024年10月18日、25日、11月1日に東洋文化研究所で3回連続の東文研セミナー「末期オスマン帝国における移民とアイデンティティ」が開催された。2024年9月に日本学術振興会の外国人研究者招へいプログラムにより来日し、東洋文化研究所の訪問研究員として研究に従事しているフアト・デュンダル氏(トルコ、TOBB経済技術大学)が講師を務めた。会場には6〜10名、オンラインでは8〜12名の参加があった。
第1回では、1856年から1908年までのオスマン帝国の移民政策が、「国家と宗教 din ü devlet」の観念にもとづき、ムスリムを積極的に呼び込むものであったことが示された。1908年から1923年を扱った第2回では、移民政策が「領土と国民 mülk ü millet」理念に立脚したものになり、受動的な均質化から積極的な均質化すなわち排除をも含むものになったことが説明された。第3回では、タンズィマート期に非ムスリムが「ズィンミー」から「ミッレト」へ、さらに「マイノリティ」へと移行し、人口数が政治的に問題化されるようになったという、クルド人/アルメニア人問題の背景が解説された。3回のセミナーは、デュンダル氏の20年以上にわたるオスマン帝国末期の移民とアイデンティティに関する研究の成果に触れることができる貴重な機会となった。各回では参加者からの積極的な質問があり、議論が交わされた。
日時:2024年10月18日、10月25日、11月1日(いずれも金曜日) 15:00〜16:15
会場:東京大学東洋文化研究所3階第1会議室(初回)、第2会議室(第2、3回)/Zoom
講師:Fuat Dündar (TOBB経済技術大学/東京文化研究所訪問研究員)
題目:「オスマン帝国末期の移民とアイデンティティ」
Migration and Identity in the Late Ottoman Empire
プログラム
第1回 10月18日 第1会議室
「移民、宗教、国家:オスマン帝国の移民政策、1856–1908年」
Migration, Religion, and State: Ottoman Immigration Policy, 1856-1908
第2回 10月25日 第2会議室
「移民の共和国:オスマン帝国とトルコの移民政策、1908–1923年」
Republic of Immigrants: Ottoman-Turkish Immigration Policy, 1908-1923
第3回 11月1日 第2会議室
「ズィンミー・ミッレトからマイノリティへ:オスマン帝国のクルド人とアルメニア人のアイデンティティ・ポリティクス」
From Zimmi and Millet to Minority System: Ottoman Kurdish and Armenian Identity Politics
※このセミナーは、JSPS外国人研究者招へい事業の助成を受けて開催されました。