日時:2019年11月7日(木) 14時~16時
題目:正統の成立――古代・中世スリランカから見える「歴史」と「言語」――
発表者:馬場 紀寿(東京大学東洋文化研究所・教授)
司会:古井 龍介(東京大学東洋文化研究所・准教授)
コメンテーター:中島 隆博(東京大学東洋文化研究所・教授)
概要:
聖典ヴェーダの言語として伝承されたサンスクリット語は、グプタ朝が成立した四世紀、政治言語の地位を確立した。知識人の言語としてのサンスクリット語は、南アジア、東南アジアに拡大し、サンスクリット語の法典、文法学、叙事詩が広まり、ヒンドゥー教や仏教のサンスクリット聖典が共有された。このようなサンスクリット・コスモポリスの時代にあって、サンスクリット語の権威を転倒してパーリ語の地位を高め(ようとし)たのが、スリランカにおけるマハーヴィハーラ(大寺)という仏教僧院を拠点とする一派である。この大寺派が四世紀から五世紀にかけて確立した「歴史」と「言語」にかんする言説は、この島で脈々と継承され、サンスクリット・コスモポリスが終焉を迎えた十三世紀以降、東南アジア大陸部で飛躍的に広がったのである。本発表では、このスリランカの事例を踏まえ、丸山眞男がおよそ四十年にわたって研究し続けた「正統」論を参照しつつ、「歴史」と「言語」にかんする言説が生まれる歴史的背景を論じたい。
担当:馬場