2025年5月22日(木)14時より、中島隆博教授による2025年度 第1回 定例研究会「世界哲学と規範」が開催された。本報告では、2020年に刊行された日本語版世界哲学史が、韓国語と中国語に翻訳されて東アジアを循環していることから説き起こし、人種主義と植民地主義を支えた哲学の罪を問いながら、そこからの修復的正義としての哲学の責任を取り上げた。「ウブントゥ」というアフリカの在地の概念と東アジアの「仁」を重ね合わせながら、近代西洋の人間観や世界観とは異なる見方を紹介した。その上で、規範の三つのレイヤーに言及し、道徳的事実、社会的・宗教的規範、さらに反自然的規範を区別し、「礼」に代表される反自然的規範の可能性を模索した。会場には34名が参加し、アフリカ概念の多様性、規範の不変性と可変性、普遍化と規範化が-ingというプロセスではないかという示唆、「世界」と「哲学」の複合語としての「世界哲学」の意義に関する活発な質疑応答が行われた。
日時: 2025年5月22日(木)14時〜16時(日本時間)
会場:東京大学東洋文化研究所大会議室(3F)、対面のみ
発表者:中島 隆博(東京大学東洋文化研究所・所長)
題目:世界哲学と規範
司会:柳 幹康(東京大学東洋文化研究所・准教授)
討論:田中 有紀(東京大学東洋文化研究所・准教授)
使用言語:日本語
要旨:世界哲学という運動が東アジアに広がっている。その間に、「西洋独占主義」に陥っていた哲学の罪と哲学の責任が問われるようになってきた。世界哲学にとって、規範とは何かを、本発表では考えてみたい。とりわけ自然本性に反する規範について、現代的な議論とともに中国哲学における議論にも目配りして論じてみたい。